秋元さん、桜井さん対談

地方企業を変える「本物のプロフェッショナル」の必要性【前編】

今回は、地域には魅力的な企業があり、魅力的な経営者がいることを多くの方に知ってもらうメディア「Local Link」の特別編です。

静岡県を拠点に活動する地方特化型マーケター桜井さんと、地方特化型採用伴走サービス「Local Link」の事業責任者を務める弊社執行役員秋元に、地方企業経営の現状と今後地方企業はどう戦っていくとよいか、対談していただきました。

【Profile】

静岡県出身。株式会社HONE(ホーン)代表。大手求人メディア会社で営業をしたのち、新規事業の立ち上げ等に携わる。2021年に独立し、2023年現在は静岡を拠点にクライアントのマーケティングやブランディングの支援、地方Webマーケターのためのコミュニティ運営などを手掛けている。

Webサイト:https://www.hone.jp/

栃木県出身。Professional Studio株式会社執行役員。地方特化型採用伴走サービス「Local Link」を展開。地方企業&スタートアップ向けの新規事業開発と管理部長を担当。2010年うるるに入社し、SaaS事業の事業部長、経営管理部長、執行役員 人事総務部長などを経て、執行役員CHRO兼人事部長を担当。10名→400名の組織づくりを牽引。上場準備から上場後の株主総会運営等も担う。2023年4月より現職。

目次

マーケティング、人事それぞれの地方企業の現状

桜井:最近は都内の副業人材の方々に地方でお手伝いをいただくことが増えてきたり、補助金、助成金等々による予算が一時的に増えたりすることで、いろんな施策が地方で回せるようになってきてはいます。

一方で全体的に言えるのが、デジタルマーケティングとか戦術的な話が、 企業分析や事業戦略がないまま進行してるケースが多いということです。本来はそこに市場があって、儲かる仕組みを作った上でデジタルマーケティングに入るっていうのが定石だと思うんですけど、リソースがあるがゆえに、そこがないまま一旦こういう商品を作っちゃったからこれを売りたいみたいなケースがより増えてる気がしています。

デジタルマーケティングでは限界があってできなくて、これそもそも市場ないよねとか、こんな利益率で売っても全然儲からないよねみたいなことが頻発していてですね。

結局、発注者は何が必要かわからないから発注しているので、 そこにプロポーザルやいわゆる紹介などで入ってきた人が、デジタルマーケティングの戦術遂行しかできない、みたいなことになっちゃうと 結果的にうまくいかない。どうやっても部分最適にしかならないっていうのが、全体感としてはある感じですかね。

秋元:経営者の方の危機感は以前よりもすごく増してるのかなっていう気はします。事業柄、接触するきっかけが人事課題みたいなところから入ることが多いのですが、どの会社も共通して、人が採れないということを言っています。

4、5年前とかよりも切迫している会社が多くて、それぞれの地域では誰でも知っているくらい有名な会社でも何も施策を打たないと採用ができない状況になっています。

それまではハローワークとか学校経由とかで、地元の高校生や大学生が自然に定員数以上来ていた会社が定員割れを起こしていて、何をしていいかわからない、このままではまずいという危機感を覚えている現状があるかなと。

地方企業に必要な人材とは

桜井:ビジネスを理解できている人が支援側に入らないとうまくいかないんじゃないかなと思っています。支援側の人間のスキルセットとして市場分析、データ分析力、大局観、戦略的思考といったものがまず必要になってきます。

しかしながらスキルだけでは地方ではうまくいかなくてですね。「とはいえ〇〇」みたいな状況が結構多いんですよ。ドラスティックに考えれば、この事業は絶対やめた方がいいというのがあったとしても、もう100年以上事業が続いていて、そこに雇用があって、そのブランドがすごく好きな人が社内にいて、その地方のアイデンティティーになっているのに、その事業をやめてしまうことが本当にいいのだろうか、みたいなことが結構あります。

もちろん最終的には経営のためにやめる判断をする可能性はあるんですけど、そこに至るまでに共感とか想像力が働かないまま地方に入っちゃうと、溝が深まっちゃうので、そういう意味でのマインドセットが必要かと思います。

スキルとマインドの両面を持った人材が地方に携わるっていうのが大事ですね。

先日、ウェブライダーの松尾さんが作っていたマンダラチャートを見た時に、地方企業のマーケティングで必要なことがまさに網羅されているなと思ってラベリングしてみたんですね。


都内だとプロジェクトマネジメント専門、SEO専門、SNS専門というような形で部分的に担うスペシャリストがいると思うのですが、地方マーケはこのマンダラチャートを1人で網羅的にカバーできる力が必要だなと思っています。どこかに得意分野を持っているという力がないと、事業全体を見て、全体最適の視点から足りないところを探すということもできないので。

どうしたら優秀な人材が地方に流動するか?

桜井:相当ハイレベルな人材が必要という話なのですが、個人的に接点のある優秀な地方マーケターの方に共通することとして、何かしら大義や義憤を持っているというところがあります。

地方は課題が先進的で深刻度も高いので、そういった難しい課題に向き合おうという反骨精神、チャレンジ精神みたいなものが重要で、そういったマインドを育てることができれば、スキルは後からついてくるのではないかなと。

「早いうちに課題に向き合うことは絶対に大切なんだ」と思わせる大人がまわりにいるということが大事な気がしますね。

秋元:桜井さんみたいなマーケターを、自社で雇うのはかなり難易度が高いと思います。都内でもなかなかいないので。

一方で地方とか地域の企業に貢献したいというマインドの人はたくさんいるので、そういった人たちのプロ集団みたいなものを作らないといけないと思っています。そういう人たちが実際にリアルでそこに行って解決する。その企業の一員となって一緒に伴奏する、ノウハウをインストールするということをやっていかないといけないと思います。

今までは地場の商圏は勝手に回るし、既存市場で食べていけるみたいな状態があったと思うんですが、日本の人口は年に約80万人減っていて、80万人っていうと佐賀県の人口とほぼ同じで(総務省統計局 人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在))、それが毎年消失していっていると考えると相当やばい状況だなと。

そういった状況で既存市場だけでなく新規市場にも展開していないといけないとなった時に、自社の内部能力だけだと難しくなってくると思うので、そこはプロ人材に伴走してもらって、ノウハウをインストールしてもらうのが必要なのかなと。

地方に貢献したいというマインドを持ったプロ人材が地域企業に伴走して、課題解決とノウハウのインストールを進めていく、そういったことが多分必要になってくるんだろうなと。

桜井:秋元さんが言うように外部の人たちがある程度入っていって、そこから内部の人たちを育成、ないしは軌道に乗せて回せるような形で整えていくということは必要だと思います。。

自社でスーパーマンを雇える可能性は人材的に限られてくると思うので、ある程度型を作って、今働いてる人たちでうまく事業を広げていけるようにするのが大事かなと。

私も実際に地方に拠点を置いて伴走をしていますが、1人で見れるのは数十社社が限界で、それでもリソースが按分(あんぶん)されてしまって、1社に対してフルパワーにできないもどかしさもあって、地方企業の内部の人たちや若い人たちを育成していかないといけないなと思っています。

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