KIGURUMI.BIZ株式会社 代表取締役 加納ひろみ 様

2024.09.01 - 2024.09.30

着ぐるみの「産院」が、ジャパニーズブランドを世界へ

「Local Link」は、地域には魅力的な企業があり、魅力的な経営者がいることを多くの方に知ってもらうために、地域企業の経営者インタビュー記事を掲載していきます。

【Profile】
KIGURUMI.BIZ 株式会社
代表取締役 加納ひろみ様

宮崎市出身。上京して英語を学んだのち、旅行会社のNY本店に2年半勤務。帰国後は外資系企業のコールセンターやアップルコンピュータ(現・Apple Japan)を経て、1998年ステージクルー(現KIGURUMI.BIZ株式会社)入社。2017年代表取締役就任。企業キャラクターの着ぐるみ製作を手掛ける。

目次

どんなキャラクターにも物語がある。その世界観を大切に

弊社は、宮崎県新富町にある着ぐるみ製作会社です。
事業売上の約9割は着ぐるみ製作で、現在は年間約200体のペースで自治体や企業様のキャラクターの着ぐるみを製作しています。これまでに約3500体の着ぐるみを製作してきました。近年は海外からのオーダーもあり、17カ国に約100体を送り出しました。

弊社のスタッフはほぼ女性。コロナ禍で仕事がなかった2年間は「社長、着ぐるみが作りたいです」と直談判をしに来るほど、着ぐるみ製作が仕事のモチベーションという人たちです。

スタッフは、お客様が着ぐるみの相談に来られると、それを何のために作るのか、どういうシチュエーションで使うのか、そのキャラクターを今後どう育てていくかということを必ずヒアリングしてから、デザインや製図に取り掛かります。

また、キャラクターの美しさや可愛らしさというのは人それぞれの基準があるので、こちらの価値観を押し付けないようにスタッフは全員意識しています。

例えば、ディズニーランドに行けば、その世界に没頭しないと楽しめないことってありますよね。着ぐるみの世界も同じなんです。キャラクターはファンタジーの世界で生きています。どんなキャラクターにも小さな物語や世界観があるので、ファンの皆さんの夢を壊さないよう、寄り添うようにしています。

その大切さを学ばせていただいたのが、彦根で毎年開催される「ご当地キャラ博」でした。弊社は、自社の着ぐるみ「ビズベア」で参加しているのですが、イベントでは各地から集まった着ぐるみのパーツが取れるなどの思わぬアクシデントが起こるので、お医者さんに扮したビズベアが、現地で手当をしてあげる、という取り組みを続けています。

そんな中で、弊社は着ぐるみのファンの方たちから「産院」と呼ばれるようになりました。着ぐるみが生まれる場所、という意味です。キャラクターは生き物なので、修理は「治療」、それが大がかりな場合は「手術」、クリーニングは「エステ」や「お風呂」、工場に送ることは「里帰り」と表現されます。おもしろいですよね。

お客様の立場に立って考えることは、時間もかかりますし大変なこともありますが、お客様が満足できないと私たちもハッピーになれません。
どうしてもお客様の価値観に寄り添うことが出来ないときは、製作をお断りすることもあります。こうした徹底した姿勢が、弊社のブランディングにつながっていったのだと思います。

こだわりぬいた着心地の良さが着ぐるみアクターに好評

着ぐるみは、お客様が「これを着ぐるみにできませんか」と持ってきてくださる1枚のイラストをもとに作ることがほとんどです。

イラストをもとに形を作るだけなら、作りやすさとコストパフォーマンスを考えて作れば良いのですが、弊社のスタッフは着ぐるみの細部にとことんこだわります。お客様が着ぐるみの中で、少しでも快適になるための手間を惜しまないんです。
「こうしたら中の人が楽だよね。涼しくなるよね。」ということを、お客様からご依頼いただかなくてもとことん考えます。

例えば、Tシャツを着たキャラクターの場合は、着ぐるみの上からTシャツを着せれば簡単ですが、私たちはTシャツで隠れる部分にメッシュ生地を使うことで、着ぐるみを軽く涼しくしたり、もしそれがダンスをするキャラクターなら、脇の下にも少しだけスリットを入れてメッシュ生地にすることで、中のこもった空気が抜けるようにします。

こうした創意工夫は、昨日や今日に始まったことではありません。さまざまなスタッフが考えたことを10年ほどかけて改造してきたからこそ、ノウハウが積み重なって今があります。そして、いま現在も改造は続いていますし、これからも続けていくと思います。

このようなスタッフの一生懸命さやこだわりが、着ぐるみの中に入るアクターさんにも伝わるのだと思います。着ぐるみには必ず弊社のタグを付けるのですが、日々いろんな着ぐるみを着て演じられるアクターさんが、「今日着たキャラクターはBIZのだった。軽くていいよね。」と、SNSで品質を高く評価してくださったりするととても嬉しいです。
私たちの製作面での技術的なこだわりと、アクターさんの実体験が積み重なって今があります。長い歴史のなかで色々なことが良い方向に働いたのだと思います。

噴出したスタッフの不満から、起死回生の社内改革

しかし、冒頭でお話したように、弊社のスタッフはほとんど女性です。主婦の方も多いのですが、労働環境に対する配慮が足りなくて不満が噴出した時期がありました。

それは、弊社が法人化した2012年頃のことです。それまで個人事業だったので、法人になるということがどういうことか色々と勉強もしましたし、法人になるからには自分たちさえ良ければOKという考えではいけない、社会に貢献できる企業でなければと思っていました。

ところが、メディアからの取材をたくさん受けることが決まっていたにも関わらず、KIGURUMI.BIZがどういう企業か、自分の会社なのにうまく説明できなかったんです。

私はもともと嘘をつけない性格で、もっと端的に言うと叱られるのが苦手です。
「取材で嘘は付きたくない」と思い、自分の会社を知るためにスタッフ全員と1対1で、自社のことをどう思ってるのか、働き方ややりがいについてヒアリングをしました。

すると、「つらい」「残業が多い」「土曜出勤はいやだ」といった不満が次々に出てきたんです。それまでの私は、納期のことばかりに気を取られ、スタッフの残業について正面から向き合っていなかったところがありました。

着ぐるみ製作には熟練を要します。職人の手によってひとつひとつ作られます。つまり、目の前にいるスタッフたちがいなくなったらKIGURUMI.BIZはもう終わりということです。

一人のスタッフが育つまでに2~3年はかかりますし、外注もできない仕事なので、そう思ったらまた怖くなって。どうすれば彼女たちが辞めずにずっとうちにいてくれるのかなと考えた時に、まずは彼女たちの不安や不満を解決しなければと思いました。

でも、そのときに私が間違ったのは、まずお母さんたちを早く帰らせたんです。若い子たちに、「あなたたちも将来はお母さんになるんだから、今はみんなでお母さんを支えようよ。あなたたちがお母さんになった時は、他のスタッフが支えてくれるわよ」と。

私がそう言ったことで、お母さんたちは5時に帰れるのですが、そうすると若い子たちが7時とか8時まで残るんですよ。今度はその子たちが疲れてきたので、そこでようやく自分の間違いに気づきました。

お母さんたちはどうしても帰らないといけないから、お母さん「じゃない人」たちを先に返した方が、お母さんたちは当然「もう帰っていいよね」という気持ちになるじゃないですか。

そこから、どうすれば残業なしで働けるかということをみんなで話し合いました。
「じゃあ、明日から残業禁止ね」と言うのは簡単です。しかし、実際に売り上げを落とさずに残業しないというのは大変なことですから。

経理スタッフが、それまでの残業代を集計して「これだけ残業代を毎月払うのなら、新しい人を雇えますよ」と提案してくれたり、社内の動線を変えたり、それぞれが仕事のスピードを上げたりしました。
定刻1時間前の夕方4時くらいになると、みんな殺気立っているので話しかけられないくらいですよ。話しかけると、「今からそれをすると、私残業になっちゃいます。明日じゃダメですか」みたいなね。

結果的に、弊社がノー残業の会社になるまでに半年かからなかったですね。あっという間でした。

ジャパンクオリティの着ぐるみ文化を、宮崎県新富町から世界へ

こうして地方で企業活動をしていると、よく「地方創生・地域活性化」という言葉を耳にしますが、地域に対する私たちのスタンスは、地域のためというよりも「一緒に生きていく」というスタンスです。宮崎県新富町に住み、お仕事をさせていただいてる。それは、どちらが上とか下とかではないですよね。そこはすごく意識しています。

県からいただくお仕事も多いので、新富町というよりは宮崎県、さらには九州のみんなで色々なことが出来れば良いなと思っています。九州を一つの島と捉えた「九州アイランド」という概念で、「#ONE KYUSHU」を愛言葉にした活動も広がっています。新富町や宮崎県という行政区域の枠を超えて人と人が繋がれば、何でも出来そうな気がしてワクワクします。

また、近年は海外のお客様も増えているので、しっかりサポートできるように、2018年には台湾に連絡事務所を開設しました。2019年には、ローカルキャラクターの推進を目指すタイ中小企業振興庁(OSMEP)と交流協定を結びましたし、間もなくアメリカのシリコンバレーにも「KIGURUMI.BIZ USA」を開設する予定です。

世界中で日本国内と同じ品質で対応できるようにしていきたいですね。それと同時に、着ぐるみという文化も輸出したいです。

また、今後は自社ブランドで商品を販売していくことにも取り組んでいきたいです。
その先駆けとして昨年取り組んだのが、ミッフィーの「フィギュコット」という人形の製作です。ぬいぐるみでもなく、フィギュアでもない、ひとつひとつ手作りのフィギュコット。日本国内はもちろん、世界にむけて発信していきたいですね。

KIGURUMI.BIZ株式会社の求人情報

KIGURUMI.BIZ株式会社では、「製作サポート事務職」の募集をしております。

製作サポート事務職

KIGURUMI.BIZ株式会社に製作サポート事務職として中途入社したAさんにお話を伺いました。

私は、事務系の仕事を希望していて色々な求人を見ていました。

色々な業界や会社での事務職を見ていた中で、当社は他にはない特徴と言いますか…職場に色々なキャラクターが広がっていて、働く職場として雰囲気が明るそうだなと思い応募を決めました。

職場によって違うとは思うのですが、一般的に事務職って働いている時間はパソコンと睨めっこだったり、コミュニケーションを取る人も限定されていることが多いので、似たような仕事をするのであれば、働いていて少しでも楽しい雰囲気の場所が良かったんですよね。工場では”可愛い”で溢れているので自然と明るい気持ちになり、笑顔が連鎖していく職場だと思います。

着ぐるみ製造の主な業務内容は、お客様からの問い合わせ対応から製作に関する打ち合わせ、見積もり提出や製作過程におけるお客様への進捗報告が中心になります。お客様の多くはこれまでに着ぐるみ製作をした方が多いわけではありません。その為、打ち合わせからお客様が着ぐるみを通じて実現したいことや、やりたいことをしっかりと確認したり、製作の過程でも写真や動画を駆使しながらイメージと外れていないかを丁寧に確認しながら進捗の報告を行います。

この仕事の魅力は、製作しているキャラクターに愛着が湧きすぎて「親目線」になってしまうことです。最初はイラストだったものが段々と立体になってきて、最終的には着ぐるみとして動き出します。そのキャラクターをお客様に送り出す時は子供が上京する時の感覚になりますし、逆にメンテナンスで戻ってきた時などは、子供が帰省してきた感覚になるんです(笑) 。イベントとかの光景がニュースなどに取り上げられていて、製作に携わったキャラクターたちを目にするときは本当に嬉しいです。

宮崎工場で働く製造スタッフのほとんどが子育て中の主婦の方です。そのため、「困った時は助け合う」精神で、お子さんの体調不良や学校行事などの時はお互いにシフトの融通を効かせながら調整しています。また、主婦で細かいところに目の届くスタッフが多くて、業務においてもお互いに確認をしながら進めたりして、コミュニケーションもすごく取りやすくて働きやすい環境だと思っています。

KIGURUMI.BIZ株式会社の募集要項

職種名
製作サポート事務

雇用形態
① 契約社員
② アルバイト・パート

試用期間
・試用期間(2週間)
・研修期間(3ヶ月)
※研修期間は時給897円

勤務先住所
宮崎県児湯郡新富町富田東1丁目47 新富アグリバレー内

勤務時間
① 8:30~16:30または9:00~17:00
② 8:00~17:00
※上記時間より1日4hから可能

給与
時給950円~

手当/待遇
・車通勤可(駐車場あり)
・社保完備
・正社員登用有
・交通費規定支給
・育児休業・看護休暇取得実績あり

応募資格
不問

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