株式会社Japan Fruits 高尾明香里社長

作る人と買う人のメリットを一番に考え、日本のフルーツ産業を盛り上げていく。

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今回は、株式会社Japan Fruits 代表取締役 高尾明香里 様です。

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【Profile】
株式会社Japan Fruits
代表取締役 高尾明香里 様

1994年生まれ。大学3年生の時に香川県の「さぬき讃フルーツ大使」に就任。国産フルーツのおいしさに感動するとともに生産者の厳しい現状を知り、フルーツの販路開拓に向けて発起。2021年に株式会社Japan Fruitsを立ち上げた。

目次

「答えは全て現場にある」

弊社の事業内容は、自社独自の受発注システムを活用した国産フルーツの卸売です。全国の受賞歴がある生産者やこだわりのある生産者と直接取引し、全国から厳選したプロ農園のフルーツを、安定供給する仕組みを構築しました。全国の産地と取引しているので、夏秋時期のイチゴや、冬のシャインマスカットなど、季節外れのフルーツもお届けできます。

取引する農園は2023年現在250か所ほどです。卸し先は季節によって変動しますが、平均すると毎月およそ600社と取引しています。

私は「答えは全て現場にある」と思っていて、扱う商品を選ぶ際には必ず農園に足を運び、栽培方法や品質、経営方針などを直にお聞きするのがモットーです。

そうすることで、生産者について知れるだけでなく、ユーザーに発信できることも増えるんですよね。生産者や産地のファンが増えれば、単価が上がったりリピーターになってもらえたりなどいいことずくめです。

現在はメーカーや店舗の仕入れ担当者などを対象としたBtoBの販売がメインですが、一般消費者向けのBtoCの要望もかなり多いですね。

実は最初はBtoCの取引からスタートしました。でも、生産者の負担をできるだけ減らしながら多くの出荷をするには、BtoBの方が都合がいいんです。BtoCの場合は配送単位が1キロずつなど少量ですが、BtoBであれば数十キロ単位でまとめて出荷ができますから。

ただ、コロナ禍でBtoBだけだとポートフォリオ的に厳しいと感じたこともあり、一般消費者向けの小売も再開するように進めているところです。配送面もそうですが、カスタマーサポートの強化も課題ですね。

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季節外れでも安定供給を実現

ユーザーから選ばれている一番の理由は安定供給なんですよ。例えばケーキ屋の場合、バースデーケーキの予約を受けてしまった以上、「フルーツの収穫が少ないので作れません」はまかり通らない。収穫が少ない時期でも安定的にずっと出し続けられる点が、おそらく一番喜ばれています。

年間を通した安定供給のための取り組みの1つとして、長野県で12人くらいの生産者のグループを作ってイチゴを出荷してもらっています。それだけで足りない場合は、わが社経由で全国の取引農園から出荷して補う体制を整えています。

また、うちでは市場で取り扱っていない規格外のフルーツも取り扱っています。受賞歴やこだわりがある生産者のフルーツは、見た目が少し悪かったとしても、味は一級品のものとなんら変わりません。

ケーキ屋だとブドウや桃が大人気ですね。桃は皮をむいて使うので、少々色が悪くても問題ありません。ブドウも粒の大きさがバラバラのものは市場だと高く売れませんが、ケーキではひと粒ずつ使うので関係ありません。こういった利点を出しながらユーザーにアプローチしています。

フルーツを一番おいしい状態で

一番おいしい状態のフルーツを新鮮なうちにお届けできるのも強みです。

うちで開発したシステムは、ユーザーから受注があったら農園に直接発注される仕組みです。 注文した翌日には当日収穫したものが直送されるので、最短で1日、そうでなくても2〜3日で品物が届きます。

市場出荷の場合、収穫してから市場や卸、仲卸を通して出荷されるので、結構時間がかかるんですよね。だから完熟の手前で収穫することが一般的になっていますが、そうすることによっておいしさが半減するんです。ピークを逃しているわけですから。

2023年現在、ユーザーは都内の方が多いですね。初めは香川県内のものを香川県内で売っていたんですが、地方だと産地と消費地が近いこともあってかメリットが刺さらず、あまりうまくいきませんでした。

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作る人と買う人のメリットを最優先に

販売価格は、顧客の希望価格と生産者自身が提案する価格をすり合わせて決めています。市場出荷と比べて中間マージンを抑えられるので、生産者の手取りも上がっているようです。

やはり販売先のルートはなるべく多く持っている方がいいと思います。収穫したフルーツは、20%はデパートでギフト用として売られているような一級品、60%はスーパーなど一般的な小売店向け、残りの10%は売りに出せない訳あり品というように差が出るものです。だから販路が1つだけだと逆に価格が下がってしまいます。

生産者が幅広い販路を持ち、どんなものが求められているのか自分自身である程度把握できている状態が理想的ですよね。だから、できればうちは複数ある中の1つの販路として、存在感が小さいまま支える存在でいたい。そうでないと結局生産者が儲からないですから。

まずは取引先のユーザーと生産者が儲かり、最後にうちが得をする仕組みでないと続かないなと思っています。

最初はAmazonのようなシームレスで利便性がいいサービスを目指そうと思ったんですが、生鮮品は天候などによって生産量も変わるため、生産者がすごく疲弊してしまうんです。 やはり私がやりたいことは、深い人間関係を築いて、それを積み重ねていくモデルでないと実現できないと感じましたね。

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フルーツ大使としての大学時代、そして起業へ

大学時代、香川県産のフルーツをPRする「さぬき讃フルーツ大使」として活動したのが全ての始まりですね。正直にいうと、始めた動機は良いバイトだったからなんですが(笑)、そんな下心で始めたバイトがすごくおもしろかったんです。

フルーツ大使の活動の一環で、生産現場を学ぶために果樹農園を訪れたのが転機になりました。高級品として知られているシャインマスカットでさえ、生産者の手取りは1つ2,000円ほどだと知り、すごく驚いたんです。

お店に並んでいるようなきれいな房のシャインマスカットを作るのって、実はすごく手間暇がかかるんですよ。ひと房5、6時間はかかると思います。最初の状態では300粒くらいついていて形が悪いので、そこから粒を取り除いて形を整えているんです。あれは芸術作品なんですよ。「それなのに手取り2千円ってどんな産業だ」と衝撃を受けましたね。

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その後、海外で日本のフルーツの販路を広げられないかと模索し、マレーシアとシンガポールに留学しました。どちらもフルーツをほとんど輸入に頼る国なので、他国産と比べても日本のフルーツはすごいと改めて知りました。

しかし、最近は中国や韓国の生産技術が上がっていて、日本産と見た目や味の違いがほとんど分からないレベルにまで近づいています。それで日本産の3分の1の価格で流通しているので、危機感も感じました。この辺りから使命感が湧き始めましたね。

留学から戻って大学を卒業した後は、いったん一般企業に就職しました。その時は、自分で起業するという選択に怖気づいてしまって……。いろいろ考えた末、新規事業に挑戦させてくれるということで、大阪にあるコンタクトレンズの会社に入りました。

ただ、私、昔から視力がすごく良くて(笑)。商材への愛着が湧かず、全然良いサービスが作れなくて、結局そこは1年半で辞めてしまいました。でも、何を扱うかはとても大事なんだと良い発見になりましたね。

その後、半年間くらいフルーツ大使時代にお世話になった農園を手伝いながら、何ができるだろうかと模索する日々を過ごしました。そして、YouTubeでのフルーツの美味しい食べ方や生産者インタビュー等の情報配信、Instagramでフルーツをライブ販売するなどの試行錯誤を重ね、2021年に起業しました。

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目指すは作るひと、食べるひと、どちらも幸せな状態

オンラインの産直サービスなどを利用すると売り上げは上がる一方、受発注のやり取りや顧客対応の手間が増えるという声を生産者からよく聞きます。そういうシーソーゲームの部分を解決できる仕組みを作りたいですね。

2023年現在、生産段階でのIT化は割と進んでいます。でも、受発注などは農協に任せきりで、請求書を出したこともなければ規格なども決めていないという生産者が多いです。

だから、受発注などの事務作業を補助できるシステムを開発し、うちだけでなく、他の産直サービスや農協、直売所などさまざまな販路で売る際の手間を減らせるようにしたいと考えています。

一番大切なのは、生産者の方が頑張った分だけしっかりリターンを得られる状態を作ることなので

さらに先を見ると、日本のフルーツの生産技術を活用し、海外での生産・販売にも取り組んでいこうと思っています。日本のフルーツって世界一おいしいですから。

キウイの生産・販売を手がけるゼスプリのようなスタイルが理想ですね。ゼスプリは株主が生産者なんです。 生産面積が多いほど株式が多くなる仕組みで、生産者の会社と言っても過言ではありません。何がすごいかというと、熟練の生産者の技術をデータ化し、それを活用して世界中で生産するという取り組みをしているんです。

こうしたビジョンのある会社なので、農業や一次産業の課題を解決したいという思いがベースにある人とは一緒に楽しく働けそうだと思います。

また、挑戦心がありすぎて他の人とコミュニケーションを取らないような人だとたぶん合わないですね(笑)。ぜひ、周りと協力し合いながら突き進んでいただきたいです。

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【URL】
株式会社Japan Fruitsのサイトです。

https://wholesale.japanfruits-channel.jp/

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社名:株式会社Japan Fruits
本社所在地:香川県坂出市久米町2丁目824-1
設立:2021年
事業内容:国産フルーツの卸売
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