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今回は、有限会社森の国 代表取締役社長 伊澤大介 様です。
【Profile】
有限会社森の国
代表取締役社長 伊澤大介
1973年、鳥取県大山町生まれ。1997年に慶応義塾大学商学部を卒業し、世界最大手の米国系コンサルティングファーム「アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)」に入社。2002年にマネージャーに昇格した後、2003年に退社し、「有限会社森の国」に入社。2007年に取締役社長に就任、2011年に代表取締役社長に就任。第10回エコツーリズム大賞特別賞、第3回ジャパンツーリズムアワードビジネス部門賞などを受賞している。
西日本最大規模のフィールドアスレチックを擁する総合アウトドア施設を運営
弊社は鳥取県大山のふもとにある総合アウトドア施設『森の国』の運営を行っている会社で、約7万平米の国立公園内に、手作りアスレチックの森、キャンプ場(約100サイト)、ドッグランなど自然を体験できるさまざまな施設を作っています。自然山林を利用した全45ポイントのフィールドアスレチックは西日本最大規模です。
鳥取県大山町というところは、スキー場から海水浴場まであるような特殊な町で植生も豊かなので、この大山周辺の自然に密着した施設を作っています。ほぼ私たちの手作りで、丸太を3,000本くらい使って、森の中から木を切り倒して皮むきをするところからスタッフが行い、大きなブランコを作るなど、できるだけ自然の木を使って自分たちが作りたいものは自分たちで作っています。
外注すると、製材されたきれいな木材で作られ、どこかでみたこと、やったことのある遊具になりがちです。でも、森の中で間伐材を活用して作ると、曲がりがある木や、フクロウさんが住んでいたようなうろがある木を使うので、100%オリジナルの遊具ができるんです。しかし自然の木材は5年程度で交換が必要となり、そのたびにスクラップアンドビルドです。だからこそ壊した後にはさらに面白いものを作ってやろう、わくわくすることをしてやろう、という私たちの挑戦です。
そんな感じでなるべく自然の森と遊具とが調和できるよう維持管理しながら、面白いものを作っていきたいなと思って取り組んでいます。よくも悪くも素人の手作りなので、プロの大工さんが間近で見たら笑ってしまうような出来かもしれません(笑)。でも、それが自分たちの一番のストロングポイントかなと思っています。
子育てを考えて故郷の鳥取に戻ることを決意
最初のターニングポイントは、東京から地元に戻ることを決めた時です。大学進学で上京し、経済や経営を専攻し、縁があってアンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)に入社。いろんなことを学ばせていただいて、マネージャーになってからもずっとアクセンチュアで働こうと思っていたのですが、結婚して子供が欲しくなったとき、自分の人生について気持ちに大きな変化が生じました。
妻は東京生まれ東京育ちで、私も妻も東京での暮らしが当たり前だと思っていましたが、子供を産み育てるには都会はどうなんだろうと。満員電車の中を幼稚園に通ったりするのかな、公園を探して1時間も車で行かないといけないのかなと考えたときに初めて、生まれ故郷の良さを感じました。
「故郷があるんだったら故郷に戻ろう、故郷で子育てして自分の人生をまたリスタートしよう」と。それまでは故郷に帰るなんて考えていませんでした。大学の頃にバックパッカーとして中国やアジアを旅していたので、できれば海外に行きたいなぐらいの気持ちでしかなかったですね。
子供に対しては、一緒に歩んでいけるような、そういう父親になりたいと考えていました。『森の国』は当時『大山フィールドアスレチック』という名前で、父が創業した会社です。私にもここを山猿のように駆け回った幼少期があったので、自分の子供にもそういう体験をしてほしいなと。当時はアスレチックがメインでしたが、大山は本当に魅力的な場所で、自分が夢中になったカブトムシ取りや川に入っての魚取りを子供たちにさせたいと思い、アクティビティをどんどん充実させていきました。
実は、アクセンチュア時代に東京ディズニーランドのプロジェクトに3年間携わる機会がありました。大都市圏にあって、最新技術を駆使して仕組みの整った夢のテーマパークを経験したことで、それとは真逆の、鳥取県大山というネパールの山奥みたいなところにある小さな施設のアナログ的な良さというものが明確に見えて、ディズニーランドとは180度違うところを目指していくんだという方向性がはっきりしました。
次のターニングポイントは、会社を継いだ時です。父が創業した会社で、家族経営の会社でしたから、将来的には代表を継ぐだろうとは思ってはいました。入社して4年間は導入や新規の企画をやり、4年後に社長となりました。
社長という仕事は「これが正解なのか?」という疑問と常に背中合わせ。それまでは上長の指示のもとでというフレームワークの中での仕事だったのが、社長になって私が最終的な責任者になり、360度すべてが私の決裁のもとで行われるようになりました。アウトドアやテーマパークは本当に正解がない仕事ですから、進歩はしていると思いながらも、もっと進歩できることあったんじゃないか、という葛藤を絶えず感じています。
鳥取でしかできない体験を大切に
経営で大切にしているのは、自分自身のルーツ・鳥取県大山に根ざした本質的な事業かどうか、ということです。大山に根ざして、ここじゃなきゃできないことなのかどうか。そして、一時の流行のもとで廃れていくものではなく、未来永劫残っていくものかどうか。鳥取県大山に来ていただかないとできなくて、未来にも必要とされるような本質的な価値がある事業なら、お客様が少なくてもやろう、続けていこうと。
爆発的にヒットしても人間の本質に根付いてないものであれば、流行のブームが過ぎ去ると誰も見向きもしなくなってしまいます。そんなサービスをうちは提供したくありません。
だから、オンライン通販等で何かを販売するということは考えておらず、お客様にここに来ていただいて消費していただく。ここに来てここでしかできない体験を思い出として持って帰っていただく。このビジネスモデルはもうこれからも変わらないでしょう。
たとえば、芋掘り。これはもう何十年も前からやっていて、これからもやっていきますが、決して儲かるものではないけれど、土に触れて汗をかいて農作物を収穫する。子供たちに体験させたいと思うことを1つひとつ積み上げた結果が今の自然体験のラインナップです。
スタッフの長所を活かす経営を目指す
経営での一番の悩みは、スタッフの活かし方です。人材が豊富な大企業で働いていたときとは全く違って、今までのやり方がまったく通用しませんでした。
限られたスタッフの能力を最大化するように心がけないといけません。自然が好きなスタッフたちはやはり個性も豊かなので、ときどき衝突をすることがあるんです。そこを上手に君はセンターフォワードの役割だ、君はディフェンスの役割だ、君はサイドバックの役割だとスポーツのチーム戦だと捉えて、フォワードの役割の人にはフォワードの役割で力を発揮してもらってというような感じで、それぞれの長所の繋ぎ合わせになるように努めてきました。
おかげさまで当時3人ぐらいしかいなかったスタッフも今は12、3 人にまで増えました。3分の2が地元の人、3分の1くらいが県外から。大山とは縁もゆかりもない地方の方からも定期的な採用に関するお問合せをいただきます。自然の中で一緒に働きたいという方が全国にいらっしゃるんですね。
新入社員はここ数年、都会の専門学校と連携して毎年1〜2名採用しています。地域資源を活用した仕事や生き物と関わりながら仕事がしたいという方たちの専門学校があり、そういった専門学校では私達のようなエコツーリズムと言われる地域資源を保全しながら、活用しながらサイクルを回していくとうあり方に共感してくれる若者が集まっています。
今後の採用に関しては、アウトドアが好きでアウトドアを一緒に楽しむ仲間を増やしていきたいとか、森の国に共感していただける、そういった方であれば”来る者拒まず”です。こちらが選んだりする立場では全然なく、むしろ、こちらから「君、一緒に働こうよ」と声かけていく感じ。その方の潜在力を発揮してもらうことに専念しています。
ここに通ってくれている子供の中には「将来の夢は森の国で働くこと」と言ってくれる少年少女もいます。だから、どなたが来ても自然と親しみ、それぞれの楽しい時間を見つけて過ごせる場所作りに共感してもらえるスタッフであれば、「君の長所を発揮して君のやりたいことをやってください」もうそれだけです。
鳥取の子どもたちがもっとのびのび過ごせるように
地元の子供たちに自然と触れ合う機会を作ってあげたいと思っています。私の子供たちもそうですが、地元の子供たちも、田舎で自然があるからといって、のびのびとした環境の中で過ごしているとは必ずしも言えない状況です。
学校が終わったら家に帰って、どちらかというと外で遊ばずに家の中にいるとか、習い事に行くとか。自由に自分の発想で遊んだり、おままごとをしたり、自然の森の中でこれをこうしたら危ないだろうかということを体験する機会や考える時間がありません。
そういった状況を少しでも良くするために、地元の小・中学校に毎年、体を動かせる体育施設などの備品の購入に当ててくださいと教育委員会経由で寄付をしています。地元の幼稚園の子供たちにも、卒園時に『森の国』の年間入場券をプレゼントして、地元の子供たちが外で体を使って遊んだり、『森の国』に来てもらって遊んだりというようなきっかけ作りをしています。
私は大都会での大企業での暮らし方と、その対極にある地方でののんびりとした雰囲気の中での零細企業での暮らし方と2つを体験させてもらいました。この地方のいいところはたくさんあって、まず生活していく心の持ちようという意味では豊かな生活を送るポテンシャルが非常に高い。通勤にかかる時間も短いし、行列に並ぶということもなく、どの施設に行ってもすぐサービスを受けることができます。遊ぼうと思ったら、巨大なショッピングモールやディズニーランドこそないですけど、海に行ったり山に行ったり、いろんなアクティビティがあって、そういった環境が自分の心と体の健康にも戻ってきますね。
仕事時間も都会と田舎ではやはり違っていて、Iターンしたスタッフは「一緒に夕食を食べたりお風呂に入れてあげたり、子供たちと一緒に過ごす時間が持てるようになった」としみじみ言っています。子育ての環境としてはとても良いと思います。
物質的なものや公共インフラという意味ではやはり脆弱ではありますが、そこを逆に「スイスみたいなところだな」と思えたら、気持ちよく過ごせるのではないでしょうか。
鳥取県大山を子どもたちが誇れる場所にしたい
鳥取県大山で育った子供たちには都会に行ってさらにいろんな経験を積んでほしいです。大山という山のある土地で生まれ育ち、そこでスキーをした、登山をした、あるいは『森の国』という遊園地で遊んだ、そんな思い出を胸に都会に巣立って行って、私の故郷はこういうところだと誇りを持って話ができたり、場合によっては、Uターンをして都会でつけた力を鳥取県のために発揮してもらったり、そういったことの原動力に繋がるような活動をしたいと考えています。
林間学校の思い出とかキャンプファイヤーって、なかなか忘れられない体験だと思うんです。子供たちにとって一生の体験を私達のところでしていただけたら幸いですし、その思い出を持って幸せな人生に向かって行ってほしいですね。
スキーもできて海水浴もできるという地形の国立公園はとても珍しく、世界に対して誇っていける場所だと思うので、これからもその魅力をどんどん世界に発信していきたいと思います。
そのために日々前進していて、例えば昨年は「てくてくの森」という純粋に散歩を楽しんでいただけるエリアを新設し、3世代で来られる方や小さなお子さん連れの親子でも、遊歩道のある畑を歩いたり、竹林の中をさまよって歩いたりといった楽しみ方ができるエリアをスタートしました。
今年は県内最大級のスケートパークを新設し、大山を眺めながら高原でスケートボードやインラインスケートなどで、より多様なユーザーに楽しめる施設作りを進めています。自然やアウトドアを老若男女どなたにも来ていただいて、それぞれが楽しみ方を見つけ、親しんでいただけるような接点作りに今後も取り組んでいきたいですね。時代に応じた自然との関わり方を見極めながら進んでいきたいなと思っています。
【URL】
有限会社森の国の公式サイトです。
http://www.sanin.com/daisen/morinokuni/
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社名:有限会社森の国
本社所在地:鳥取県西伯郡大山町赤松634
設立:1978年
事業内容:アスレチック、キャンプ場、自然体験プログラム、ドッグラン、スキー教室、農園などの運営
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