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今回は、株式会社しちだ・教育研究所 代表取締役社長 七田厚 様です。
【Profile】
株式会社しちだ・教育研究所
代表取締役社長 七田厚
1963年生まれ、島根県出身。七田眞の次男。修道高校卒。東京理科大学理学部数学科卒。1987年より(株)しちだ・教育研究所 代表取締役社長に就任。著書に『お父さんのための子育ての教科書』(ダイヤモンド社)『ラクする!トクする!七田式算数教室』(サンライズパブリッシング)などがある。
現在の事業内容は?
当社は、幼児小中学生向けの教育事業を主事業とし、現在、全国に230教室ほどあるフランチャイズ教室の本部として、各教室への情報提供や教室用教材の開発を行っています。海外事業は今年で24年目を迎え、七田式の教室は世界16の国と地域に展開しており、国内では一般家庭向けの通信販売事業にも力を入れています。
「認めて・ほめて・愛して・育てる」というのは、1990年代に創始者の父・七田眞がPHP研究所から出版した本のタイトルで、父が目指す教育の代名詞です。父は2009年に亡くなりましたが、亡くなった後も3回ほど増刷されました。2020年に若干リニューアルし、スマートフォンとの付き合い方など最近の話題を私の方で書き加え、父と私の共著という形で販売しています。
第1のターニングポイント
最初のターニングポイントは、家業を継いだことです。実は、当初は会社を継ぐ気はまったくありませんでした。
父が会社を創業したのは私が高校に入学した年のこと。それまで地元で英語の塾をやっていた父が、幼児教育の大切さを全国に伝えていきたいという思いで、会社を興しました。創業5年目、私が大学生のときに東京へ進出。マンションの一室をオフィスにし、私もそこへ住むことになったので、自然と仕事を手伝うように。
とはいえ、当時は事業内容についてはあまりよくわかっていませんでしたね。「天才児をつくろうとしているのかな?そんなに賢い子をつくってどうするんだ、賢くなりすぎて人と打ち解けにくくなるのでは?」くらいに思っていて。仕事を手伝ううちに「天才児をつくろうとしているのではなくて、父の教育を受けていると結果的に天才児になっちゃうんだ」とだんだん理解するようになりました。その子の人生が良くなるよう、その子が持っている能力を引き出そうとしているんだと。
「親が敷いたレールに乗るのは嫌だ、自分で道を切り開いていきたい」という思いがあったので後を継ぐ気はなかったものの、結果的に継ぐことに。今では「父が残してくれたのはレールじゃなくてステージだったと。自分がやりたいことをやれる舞台で、それをどう生かすかは自分次第なんだ」と思っています。
大学卒業後は子供の英語教育がメインの関連会社の専務になりました。当時の教材は、たった6、7人しかいなかった島根本社の社員が手作業で作っていまして、まだ幼児教育に取り組む企業がなくて何をやっても反応がいいけど、もっと良いものを作れるんじゃないかと父に持論をぶつけていたら、「そこまで考えてるならあなたが社長をやりなさい」と言われ、昭和62年9月に社長に就任することに。社員からすると、それまでは「厚さん」と呼んでいた人を、今月からは社長と呼ばなきゃいけない。社員が一斉に引いてしまって、気軽に飲みに誘ってもらえなくなり、寂しい思いをしました(笑)。
第2のターニングポイント
父は160冊ぐらい本を書いた人でしたが、1996年『超右脳革命: 人生が思いどおりになる成功法則』という大人の右脳開発がテーマの本が30万部というヒット作となりました。幼児教育部門が伸び悩んでも、こんなふうに大人の本が売れていた頃は良かったのですが、1、2年で大人のブームが去ると、経営がかなり厳しくなりました。銀行からは「毎月500万円経費を削りなさい」と言われましたが、250万円下げるのがせいいっぱい。定期預金や保険を解約して支払いに充てたことも。それも5、6回繰り返したら、もう吐き出すものがなくなってしまい、これは新たなビジネスをやらなければ会社がもたない、ということで小学生向けの教材や視聴覚型の教材開発をスタートします。
幼児教育は未就学児がターゲットなので、6年後には顧客がすべて卒業して入れ替わってしまいます。だから、新規顧客を開拓する必要があるのですが、少子化でそもそも子供の絶対数が減っているわけです。ならば、ターゲット層を小学校3年生まで延ばしたらどうか、それで5割増が狙えるんじゃないかと考えたのです。
この頃、オリジナル学習ソングをたくさん作りましたね。昔の地名の歌、新幹線の駅名の歌など、毎月CDを3枚ずつ。作曲、編曲、歌唱は音楽事務所に依頼しましたが、作詞は私自身がやっていました。いったん帰宅して子供と一緒に晩ご飯を食べてから、10時過ぎにまた会社へ行って制作作業をするという日が、ひと月に1日は必ずありました。ちょうどノストラダムスの大予言というのがあって、淘汰される会社があるといわれていた頃で、「世の中には素晴らしい経営者はごまんといるけど、この会社を一番上手に経営できるのは自分だ。きっと良くなる、良くなる」と自分に言いきかせながらがんばっていたのを覚えています。
新規事業が功を奏して、何とか経営危機を脱出。のちに心臓弁膜症で手術をしたのですが、病気は当時のストレスが大きかったからだと思いますね。
教室展開・ノウハウ・教材開発、この3つを得意とするトップで経営を回し続け、教室は3年で100ずつ増加し、9年後には年商10億、自社ビルとボーナス10ヶ月分支給を達成。シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイへと海外展開にも着手し、現在に至ります。
経営で大切にしていること
教材開発に関しては、”親子の笑顔が生まれるようなものを作る”ことを大切にしています。どちらかというと、親御さんより子供が喜ぶものを作りたいと考えています。子供が喜ぶものと親が喜ぶものはちょっと違うんですよね。幼児向けのプリントでも、親御さんは「各社いろいろあるけど、なんだかうちの子は七田式のプリントが合っているみたいでやりたがります」と言われると、「ああ、もののわかっているいい子だな」って思いますね(笑)小学生向けの教材になると、教材選びの主体が親から子になるので、子供目線で、子供が喜ぶようなアイテムを開発するよう努めています。教材開発は私が一番こだわってきたことで、市場に出ている教材にはすべて目を通しています。
社員教育も大切にしています。20代の頃にお客様からのクレーム電話が社員から私へと回ってきたことがあるですが、そのお客様いわく「社員教育もろくにできないような会社にうちの大事な子は任せられません!」と。なるほど、もっともなことだと思い、社員教育に積極的に取り組むようになりました。
通信販売の会社でもあるので、電話応対も大事です。電話応対コンクールに毎年県大会に2人参加しており、過去に2回優勝、1回準優勝しました。日本語検定も受験させています。メルマガを書くにしても、お客様にメールの返信をするにしても正しい日本語は大事ですから。
地域への思い
10年以上前から、地元のライオンズクラブに所属し、積極的にボランティア活動に参加しています。また。2022年から地元の商工会議所の副会頭を務めており、会議やイベントに積極的に参加しています。
今年、社屋も新しくなりました。当社のある江津市は、中国地方でも2番目に人口の少ない市で地代が安く、広大な敷地(1万平米=1ha)を取得することができたので、新しい社屋を新築し、移転したのです。駐車場も広く、社員数より多い100台停めることができます。
地域のさらなる人口減少をくいとめるべく、今後も新卒社員の採用を進めてUターン・Iターンを促進し、働く場を提供することで地域の商工業の発展に寄与したいと考えています。
将来のビジョン
今後は日本を含めた20の国と地域での展開を考えています。2023年6月には、10カ国以上が久しぶりに集まる有意義な国際会議を行いました。国内では、47都道府県を制覇したいですね。青森・山形・和歌山・愛媛・熊本等、まだ七田式教室がない県があり、通わせたくても教室がなくてチャンスを逃してしまっている親御さんがいるので、早く教室を作りたいと考えています。
全国の教室を次世代に引き継ぐことも重要な課題です。昭和の終わりから平成5年ぐらいまでに200教室でき、100人近いオーナーがいるのですが、それから30年、40歳で教室を始めたオーナーはもう70歳。そろそろ教室運営を卒業する歳です。そこでうちの長男が会長になって「各教室の事業承継をサポートする未来会」を発足しました。次期経営を引き継ぐことになる30代を中心に、横のつながりを生かして悩みを相談したり勉強会を開いたりしています。当社が危機を乗り越えられたのも、全国の先生方の頑張りがあったからこそなので、しっかりサポートしたいと考えています。
どんな人材が必要か
毎年、新卒採用を実施しており、2022年度は8人、2023年度は4人、2024年も7、8人を採用する予定で、社員の75%は女性です。子供が好きで、好奇心を持って仕事に取り組める人と仕事がしたいですね。大分昔の話ですが、面接試験を私一人でやっていた頃は、笑顔を見ていました。ちょっとつまらないことを言って、屈託のない笑顔が出たところで人間性を判断させていただく(笑)。実際にそれで採用して、大きな間違いはありませんでした。当社でうまく働いているイメージができる人かどうかも大事です。人間関係能力が高く、ともに働くことができる人、会社の本業には関係ないでしょうというようなことも面白がってやってくれるような、ノリが良い人と一緒に働けたら嬉しいですね。
【URL】
株式会社しちだ・教育研究所の公式サイトです。
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社名:株式会社しちだ・教育研究所
本社所在地:島根県江津市嘉久志町2345-5
設立:1978年
事業内容:
【胎児・幼児・小学生教育】
・教材企画、開発、販売
・国内、海外教室運営サポート
・「七田式」のブランディング
【七田式食学】
・商品企画、開発、販売
・正しい「食」の知識の発信
【大人の能力開発】
・大人向けの能力開発教材の販売、情報誌の発行
・高齢者向け教材開発、制作
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