「Local Link」は、地方にある魅力的な企業や経営者の想いをストーリー形式で知ることのできる求人メディアです。求人募集中の企業については、インタビューの最後に求人情報と応募フォームが掲載されています。
今回は、小平株式会社 代表取締役社長 小平勘太 様です。
【Profile】
小平株式会社
代表取締役社長 小平勘太 様
1980年生まれ。京都大学農学部、米国イリノイ大学院卒業後、ITコンサル会社にてGlobal SCMの導入と開発に従事。 農業ベンチャー3社の起業、家業である小平株式会社の取締役を経て、2012年代表取締役社長に就任。「地域に根差し、世界で勝負する」創業110年の後継ぎとして、社会に安心と希望を届け続ける企業の代表を務める。
鹿児島でエネルギー事業をメインとする総合商社
小平株式会社は曾祖父の鍛冶屋に始まり、祖父がLPガス、父がITと国際貿易という流れで、時代の変化に対応しながら事業を拡大してきました。2023年で創業111年、私で4代目になります。
現在の事業は大きく分けると「エネルギー事業」「IT事業」「グローカルビジネス事業」の3つです。
メインとなるのはエネルギー事業。LPガスの一般家庭向け小売や販売店向け卸のほか、セルフガソリンスタンドや、グループ会社の太陽ガス株式会社が太陽光・風力・小水力・バイオマス系の再生エネルギー事業にも取り組んでいます。
またIT事業においては、社会福祉法人・宅配事業者・エネルギー供給会社向けのソフトウェア開発サービスや、近年ではDXなどIT支援事業にも取り組んでいます。
グローカルビジネス事業は、魚のすり身原料や冷凍野菜など農水産加工品の輸入や日本国内の食品や地域産品の輸出などや、各国のニーズに応じた商品を輸出しています。現在、ロサンゼルス・寧波・ホーチミンに営業所があり、今後さらに増加する見込みです。
なお来年は、本社を現在の鹿児島市から日置市の温泉街に移転し、100年先を見据えた「未来のライフスタイル」を作る事業にも力を入れていく予定です。
創業110年目のミッション・ビジョン・バリュー策定
転機は2022年から始めた第4創業ですね。1年間でミッション・ビジョン・バリューの策定、組織改革、人事評価・報酬制度の刷新、DXなど、およそ50個の施策をして多くのメディアでご紹介いただきました。
きっかけはコロナ禍でのコミュニケーション不足により、人間関係のトラブルが頻発したことでした。役員同士の関係も悪化してしまったんです。社内のエンゲージメントの低下もあり、これを放置していてはまずいと、後に執行役員となる池田君を口説いて入社してもらい、二人三脚で会社の変革を始めました。
まず取り組んだのは、創業110年目にして初めてのミッション作成です。全役員5名で合宿をして『海の冒険者を祖に持つ「新しい老舗」として、不確実性の荒波を乗りこなし、これからの百年も安心と希望を社会に届け続ける。』というミッションを作り上げました。この合宿を通じて役員同士のわだかまりが解消できたことは、その後のチームビルディングにおいてとても大きな成果となりました。
ちなみに「海の冒険者を祖に持つ」という言葉を入れたのは、先祖が海賊だったという説があるからですが、昔は大切なものを守りながらも変わることを恐れない心意気があったはずなのに、長い間そのことを忘れていたのではないかと思います。変わることを躊躇せず、時代に適応していくことを大切にしていきたいと思っています。
またビジョンは『Vision2032』と題して「地域だからこその可能性が花開く、ワクワクあふれる街を生み出す」など、10年後にたどり着きたい6つの姿を掲げました。そして、社員も巻き込んで作成したバリューは『KOBIRAは正々堂々、100年誇れる冒険をする』を大項目に掲げています。ミッション・ビジョン・バリューのいずれも「冒険」がキーワードです。これらを全社員が共有化できるように発表会を設けるなどしてプロセスを大切にしています。
人事評価と報酬制度も刷新しました。それまでの社長の個人的な判断から、チーム評価・個人評価・バリュー評価を取り入れ、何が達成できれば等級が上がるのかを明確にしたほか、肩書もマネージャーに加えて、エンジニアや工事技術者のためのスペシャリストという肩書を追加して、将来の目標を設定してもらいやすくしました。
DXにおいても社員にノートPC・iPad・スマホなどのデバイスを支給して生産性を向上したり、組織が機能しているかチェックするサーベイツールを導入してエンゲージメントが下がっている部署を集中的にフォローしたりするなどしています。
会社の「ビジョン」と社員の「ウィル」を重ねる
社員にはよく、会社の「ビジョン」と自分自身の「ウィル(願い)」をちゃんと重ね合わせようということを伝えています。この2つがしっかりリンク出来ていれば、自分の人生のプラスになるという内的動機に支えられた仕事のやり方ができるようになるからです。
会社のビジョンには、僕自身の内的動機「この会社を最先端まで進化させ、最高にイケてる会社にしたい!」という思いも反映されていて、それが社員の内的動機につながるようなプロセスを経営者として大事にしてきました。
お金と引き換えにパワハラ的な働かせ方をするのではなく、個人個人がウィルを明確にしたうえで会社と同じ方向に進んでいけるということ、それこそが社員と会社が共に成長できる最も強い推進力が生まれるスタイルなんじゃないかと思っています。
地域の幸せに企業がどう貢献するべきか
冒頭でもお話しましたが、来年2月に本社を鹿児島市から日置市の湯之元というシャッター温泉街に移転します。ビジョンにある『地域だからこその可能性が花開く、ワクワクあふれる街を生み出す』の実現に向けた第一歩です。「この街を世界に誇れるウェルビーイングタウンにしよう」という協定も日置市と結びました。
温泉街ですからもちろん温泉があって、海から近いのでサーフィンもできるいい所なんです。僕自身は5年前に移住したのですが、コンビニはあるものの、コーヒー屋もないし、レストランもないし、ピザ屋もないので、自分が積極的に関わることで街が楽しくなれば、私生活も楽しくなるという循環ができるかもしれないと考えたのです。
2020年からは、カフェ出店、キッチンカー出店ができる『HAMAOKA POCKET PARK(ハマポケ)』という公園を建設して公園内の施設を無償で提供しています。費用負担ゼロという手軽さもあり、年間で100日以上の出店がある人気施設に育ちました。ここから3社が独立して、町の活性化に貢献できているように感じます。
こういったことを「地域への贈与」と呼んでいます。地域と企業が対等な関係性を作るにあたって企業側が見返りを求めず、最初はとにかく与えるというギブ アンド ギブの精神から生まれる関係性が望ましいと思っています。
半径2~3キロの生活を楽しくするということ
本社をこんな風に田舎に移すのは、大企業のスタートアップでもなかなか出来ないですよね。会社が大切にしているビジョンの「地域を大事にしよう」とか「ワクワク溢れる街を作ろう」というのをここまで思い切って体現することで、会社自体のブランディングにとても貢献していると思います。
100年以上の歴史ある会社がシャッター街に本社を移して、DXも推進し、海外とビジネスしているということまで揃うと、かなりオンリーワンの会社なので社員のプライドにもつながるし、会社が何のために存在してるかという問いに対する答えにもなります。
ただ、僕の場合は使命感というより少し単純で、先ほどお話したハマポケもきっかけは母方の祖父が営んでいた衣料品店の跡地の活用ですし、母や妻が育った町でもあるので何かを行えば皆も喜んでくれるので、半径2~3キロの生活をすごく楽しくしたいといったところですね。
一方で会社としては、この地域は関連会社である太陽ガスの顧客が70%ぐらい占めているので、街を良くするということは顧客へのサービスにもなるし、顧客が増えれば会社の売り上げも増えます。それに加えて僕の生活も楽しくなるのですから、win-win-win な感じになっています 。
これから街の人と社員と自分が一体となって楽しくなるようなプロジェクトをいろいろ作っていく予定です。本社を移すというのもその1つになるかなと思っています。
未来のライフスタイルをつくる
来年には『未来の暮らし研究所』を立ち上げ、未来のライフスタイルを作る事業にも力を入れていくつもりです。
100年先、いま僕らが取り組んでいる「エネルギー」「IT」「食」は、ますます暮らしと密接になっていきます。100年先のことを考えて暮らしのアップデートをしていきたいんです。
例えば、ITでは高齢者が恩恵を受けるようなエイジテックと言われる分野だったり、食では栄養性だったり、エネルギーではアップサイクル素材の活用や脱炭素など。単に便利にするというよりも、エネルギーを自給自足して電気代がかからないようにすることも含めて、実現可能なモデルを提唱していきたいです。
今後、湯之元を舞台に、たくさんいらっしゃる高齢の方たちにモニターになっていただきながら、一緒にやっていけるというのはすごく楽しみです。
新しい中小企業のかたちを創る仲間を大切にしたい
うちの会社は親子2代で社員さんというパターンが多いんです。さらにその子どもも3代目の社員として入ってくれたらとても嬉しいです。
僕たちは同族企業なので、それほど資本主義に執着しなくてもいいところがあります。数字を出す、成長するというのは現実問題としてもちろんありますが、それと同時にもっと大きな世界の問題に対しても貢献できるということを見せていきたいです。
地方では外資系や東京の大企業よりどうしても給与水準が下がってしまいますが、それでも僕らが取り組んでいる街づくりや、「新しい中小企業の形を創る」というミッションを実現するために、ミッション・ビジョン・バリューに共感してくれる仲間を大切にしたいです。
ありがたいことに最近そういう人が本当に増えてきて、いろんな優秀な人たちがジョインし始めています。フルリモートのエンジニアが大阪・京都・神奈川にいますが 、副業も認めていて、部署によってはフレックス制も取り入れているので本当に自由に働けます。社員のなかには、将来オーストラリアのパースに住みながらリモートで働くという夢を持っている人もいて、全然いいですよ!と伝えています。
年に2回、全社員が集まるVision Meetingの際には会社の費用負担で鹿児島に来ることも出来るので、新本社が完成した暁には、サーフィンして、温泉入って、会社のワインセラーでワイン飲んで、美味しい海産物食べて、ゆったりして帰る、そんな生活ができるというのはなかなか面白いかなと思います。
【URL】
小平株式会社の公式サイトです。
ーーーーーーーーーーー
社名:小平株式会社
本社所在地:鹿児島県鹿児島市下荒田4丁目48番9号(2024年2月移転予定)
設立:1965年(グループ前身は1912年)
事業内容:エネルギー事業、IT事業、国際貿易事業
ーーーーーーーーーーー