免疫力アップにもなる清潔寝具「パシーマ」は、誠意と努力に支えられた製品管理から。

龍宮株式会社

代表取締役梯恒三様

「Local Link」は、地方にある魅力的な企業や経営者の想いをストーリー形式で知ることのできる求人メディアです。求人募集中の企業については、インタビューの最後に求人情報と応募フォームが掲載されています。

今回は、龍宮株式会社代表取締役梯恒三様です。

【Profile】
龍宮株式会社
代表取締役　梯恒三様
1956年福岡県うきは市出身。1980年3月に熊本大学機械工学科を卒業し、日本機械学会の「畠山賞」を受賞。大学在学中に創業者の父・禮一郎に請われ、1年間休学して家業を手伝う。大学卒業後に龍宮に入社。2012年に三代目の代表取締役社長就任。「パシーマ®」の売上を順調に伸ばし、商品バリエーションも増え、社業を発展させている。日本睡眠改善協議会の「睡眠改善インストラクター」の資格をもつ。2021年には「JBAヘルスケア認定寝具（TM）」「地域未来牽引企業」に選ばれた。著書に「一品勝負」(幻冬舎)。

丸洗いできる清潔寝具パシーマ®の特長「洗濯を繰り返すと部屋がきれいになっていく」

「パシーマ®」は脱脂綿とガーゼを用いた清潔寝具で、丸洗いできて肌に優しいのが特長です。弊社の売上の90%以上を占める主力商品で、吸水性の良さを活かして布巾、ハンカチ、ガーゼといった日用品、肌ざわりの良さと軽さを活かしてパジャマ、部屋着といった衣類も展開しています。

工程にはたっぷりと時間をかけており、精練（※1）だけで1日、染色に1日と2日がかりのプロセスで残留物を徹底して取り除きます。純度を医療用にまで高めることで、赤ちゃんの肌にも、シニアの肌にもやさしい製品になっているんです。
（※1 綿から油分などの不純物を取り除き、純度の高い綿製品へと磨いていく工程）
パシーマ®で使用している中綿（なかわた）は、加工する前のコットンに比べて、保温性が2倍あるのも特長で、使用者は冬場の睡眠で深い眠りが長くできるという調査結果も出ています。

洗うことでよりふっくらと長く使えるのも特長のひとつ。綿製品は洗うとボロボロになってしまうものが多いのですが、パシーマ®は洗濯機でネットに入れずに洗えます。かゆみの原因になるダニアレルゲンを簡単に洗い流せるんです。
またホコリが出ないという特長もあります。ホコリをまき散らさないのと同時に、洗濯することで、部屋で付着したホコリを洗い流すこともできる。これを繰り返すと部屋がきれいになっていきます。

元々はアレルギーの方のために作った寝具だったのですが、調べていくと非常に睡眠に良いことがわかりました。
使用者のうち95%以上が寝つきが良いとの結果があり、血液検査、尿検査をしたところ99%以上がよりリラックスして眠れるというデータが出ています。それは、免疫力がアップすることを意味します。

10年かかった「パシーマ®」開発の背景

先代がアトピー体質で、病院を転々としていました。そのうちにどんどん薬が強くなっていって、最終的には効かなくなってしまい、薬が強いせいで精神も病んできて、それでまた病院に行ったら「薬を半分にすればいい」と言われて、半分にしたらまたかゆみが出てきて。
かゆみをどうするか、自分の身体をどう守るかという時に、自分の会社で作っている脱脂綿・ガーゼは医薬品だから、皮膚に当てておけば治るはずと、試作に入ったという経緯です。

パシーマ®は開発に10年かけており、脱脂綿とガーゼを純粋に縫い合わせたものからスタートしました。その製品は身体のほてりが取れて非常に良かったものの、洗濯をするとやはり綿が片寄りしまう。洗濯をしても中綿が片寄しない製品の開発が求められていました。
開発当時は抗菌防臭布団が他社で売れていて、「洗わなくてもきれいな布団が良い」という認識が世の中に広まりつつあった時代です。洗わないと不衛生になるのですが、当時はその認識が広まっておらず、洗わないのは害悪であるともなかなか言えませんでした。

大手のメーカーさんが「洗える布団」ということを言ってくれたおかげで、「洗えるのは良い」となって、製品の認可をとって売っていく目途が立ち、開発が本格化し、その後、睡眠の研究に入っていくことになります。

誰が、いつ、どの機械で作業をしたかわかる、徹底された製品管理

パシーマ®は製品管理も徹底して行っており、人と地球に優しい繊維製品の証である「エコテックス®規格100」の中でも最も厳しい「製品分類Ⅰ（乳幼児用製品）」をクリアしています。これは日本の寝具としては初です。エコテックスは毎年規格が変わって、毎年検査があるので取り続けるのが大変なんですね。

製品管理は各製品の作業者・機械番号・時間などの履歴がわかる「トレーサビリティ」を実施しています。
はじめは紙ベースでやっていたのですが、どうしてもミスが出やすいので、ものづくり補助金を活用して、製品管理用のソフトウェアを導入しました。今では製品バーコードを印刷したものを読むだけで、誰が、いつ、どの機械で作業をしたかわかるようになっています。

製品管理を徹底するという目的ももちろんありますが、スタッフに自分に作ったものに誇りを持ってほしいという目的もあります。

「誠意と努力」「技術の向上」「生産の奉仕」という3つの社是

弊社には「誠意と努力」「技術の向上」「生産の奉仕」という3つの社是があります。それぞれ平たく言うと

真面目に頑張りましょう
昨日より今日、今日より明日と少しずつ良くしていきましょう
ものを作ることで世の中に貢献しましょう

ということです。
今でも給料を現金で、給料袋に入れて支給しているのですが、給料袋には社是書いています。給料袋を開ける時に、短い文字だから読むだろうと。そういったところで社是の浸透をはかっています。

世の中への貢献は、お客様から毎日のように届く、直筆の手紙からも感じています。以前は会社のコルクボードに貼っていたのですが、貼り切れなくなってしまったので、Facebookに掲載するようにしました。布団屋さんやお客様にも読んでもらいたいですし、社員も読んで誇りに思ってくれていると一番いいですね。

事業を通じて地域に恩返ししていきたい

工場が50周年になるタイミングで何か地域貢献をしたいなと思い、うきは市で赤ちゃんが生まれたタイミングでパシーマ®をプレゼントできたらいいのではないかと。
市に相談したところ、定期検診のタイミングで保健師さんに配ってもらってはどうかという話になり、お手紙を添えて配っていただきました。
会社というのは働いてくれる人がいなければただの箱で、実際に働いてくれているのは地域の方々です。長年この地域で事業をやらせてもらっているので、事業を通じて少しでも恩返しができたらいいなと思っています。
配った子たちは小学生になっていて、先日社会科見学で会社にも来ました。10年後に社会人になる際に1人でも応募があればすごく嬉しいですね。

自分たちで修理できる、手の届く範囲の技術で動かせるものを大切に、一貫生産スタイルを続けていく

弊社は一貫生産をしており、いろんな人がいて、いろんな機械があります。織物もやっていて、製綿もやっています。
それから染色、キルティング、裁断、縫製、検品、検針、全部やっています。他社にはないような機械、自分たちで作った機械もあります。小さな会社なので誰かが休めば誰かが代わりにやらないといけません。
つまり初めて取り組む仕事に携わる可能性があるので、新たにチャレンジして、覚えていく、そういった姿勢を持っている方と一緒に働きたいと思っています。
それに縫製ができる方はどんどん少なくなっているので、縫製ができる方は宝物と思ってどんどん採用していきたいです。

国内の繊維産業はボロボロで、皆さんが着ている服の98%は海外製です。2%の国産品も縫製だけしているのがほとんどで、生地や染めからやっているのはさらに数%。そういうことを私たちは1つの工場でやっているというスタイルになります。
繊維産業がそういう状況なので、工場で使う機械を作る機械屋さんも潰れたり、作るのをやめたりしています。技術者もいません。そうすると自分たちの会社で機械を作って、メンテナンスしないといけないわけです。
機械屋さんが潰れて誰もメンテナンスできないとなってしまうリスクを考えると、レトロでもいいので、自分たちで修理できる、手の届く範囲の技術で動かせる、そういうものの方がいいと私たちは考えています。自社で機械を作れない、技術者がいない工場はなくなるんだろうなと。だから技術者が入ってくれるとありがたいですね。

そういった背景もあって、会社の規模を急に大きくするのはリスクが大きいので、今後は少しずつ拡大していこうと考えています。
愛用してくださるお客様を増やして、生産設備を整えて、働く人を増やしてと、年に数%というレベルの成長をしていけたらなと。そういう整備ができて、皆さんのご要望にこたえられるという流れだと思っています。
5年前からフランスでの展開にも挑戦していますが、日本でパシーマ®を現在の規模にするのにも30年かかっているので、同じ規模にしようとしたら30年かかるだろうなと。だとしたら早いうちにやっておこうと思って少しずつチャレンジしています。