株式会社ニット・ウィン西口 功人代表

製品の「奥行き」を意識する。海外にも認められた、靴下から紡ぐ新たな価値。

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今回は、 株式会社ニット・ウィン 代表取締役 西口功人 様です。

【Profile】
株式会社ニット・ウィン
代表取締役 西口功人 

1984年、奈良県生まれ。関西学院大学商学部卒業後、ユニ・チャーム株式会社で営業、マーケティングを経験し、2012年に家業である株式会社ニット・ウィンに入社。2023年に代表取締役就任。「靴下で一日を変える。靴下で価値を変える。」をパーパスに、こだわりの靴下を作り続けている。

目次

自社ブランドの靴下を30カ国以上に展開し、コロナ禍で売上を伸ばす

ニット・ウィンは天然繊維を主軸とした「靴下・ニット製品のOEM製造」と「自社ブランド商品の製造・販売」をしている会社です。

自社ブランド商品は「はくひとおもい」をコンセプトにした「NISHIGUCHI KUTSUSHITA」、「いとおしさに出逢う」をコンセプトにした「hakne」、「わたしにやさしい」をコンセプトにした「memeri」の3つで、2018年からは輸出も始めて、2023年現在では30カ国以上に展開しています。

海外展開に関しては、2019年9月、2020年1月とパリの展示会に出展して高く評価していただいたので、同じようにニューヨークなどの地域でも出展できないかと視察をしていたところ、新型コロナが蔓延してロックダウンとなってしまったというところが転機になりました。
海外の展示会も全部クローズになっていて、オフラインでの接点がなくなっている状況でしたが、うちの場合、SNSやWEBサイトを通じて一気に問い合わせが増えたんですね。

コロナ前から、自分たちが海外に発信するためには、WEBサイトもちゃんとネイティブの感じで価値を伝えるサイトにしないといけない、SNSでの伝え方も海外をベースにした伝え方をしないといけないっていうのをやってたからこそ、そのタイミングで一気にどんと増えたのではないかと考えています。

日本の消費と海外の消費はやはり違っていて、日本の場合はものが良くてコンセプトがあれば伝わるところがあるのですが、海外の人たちはアート志向が強くて。たとえば展示会であれば、日本の場合「コンセプトはなんですか?」という話になりますが、海外の場合コンセプトは聞かれず、ブランドの成り立ちを見て、自分のお店に合うかどうかを判断して、聞いてくることは取り扱い条件とかが多くて。

だからデザインが良いとか、コンセプトがあるというだけではダメで、そういったものがあったうえで見た瞬間にオーラを感じるくらいでないと、海外のバイヤーは興味を持ってくれません。

とはいえ、やることとしてはシンプルで、きっちりと出力を上げて、良いものを正しく作って、それをきちんと伝えてということをして、製品の強度が強ければ届いていくと考えています。芯を食った製品は、届いて、そこにファンがついて、広まってという循環になっていくので。

その奥行きに価値がある

弊社は祖父が1950年に創業した会社で、私は三代目になります。絶対に家を継ぐと決めていたわけではありませんが、高校の頃から意識はしていました。

大学では流通マーケティングを学んで、新卒はユニ・チャームに入りました。営業がめちゃくちゃ強くて、マーケティングも強くて、海外も行けるということで。結局海外には行かず、6年勤めて営業とマーケティングを経験させてもらいました。海外に行くにはあと2、3年くらい必要で、行ったら帰ってくるのにもう4、5年かかって、そうしたら30半ばになってしまうと考えて、2012年にユニ・チャームを辞めてニット・ウィンに入社したという流れです。

ユニ・チャームでの6年に関しては、特にはじめの4年で経験した営業がやっぱり良かったなと思います。対人強度がすごく上がりました。私は卸し担当だったのですが、交渉とか競合メーカーとの駆け引きとかめちゃくちゃ勉強になって面白かったです。

あとの2年はマーケティングの仕事に行きまして、そこでは少し苦戦しました。大きい企業なので当たり前ですが、キチンと定石を踏まえて進めていく必要があり、感覚派の私には適応するのに時間がかかりました。直感は適当なものではなくて、過去の経験から導かれているので正しいことが多いと思うんですよね。
今もマーケティングの定石は抑えつつ、数字よりも直感や製品の「奥行き」を重視してブランドを作っています。今の時代、お客さんが欲しいと思うものは、大抵すでに存在しているので、マーケティングをしているという意識はありません。何が消費者の心を揺さぶるかとかいうと「奥行き」だと思います。

例えば京都の料理人が出すお吸い物のうまさって、その人だから出せるものじゃないですか。その人の火加減なのか、だしの取り方なのか、数値化できないものから出される奥行きで。しかもお吸い物食べたいなと思って食べるものではなくて、出てきて食べた時にどえらいうまいという感じで。その奥行きに価値があると思うんですよね。

あるべき姿から考えたビジョン

弊社のパーパスは「靴下で一日を変える。靴下で価値を変える。」、ビジョンは「靴下の魅力を追求し、靴下のその先の世界を創造する。」です。
世の中、物が溢れていて、それぞれに専門のプレイヤーがいて、そんななかで奥行きを出そうと思ったら、ドメインにこだわるのは大事だなと。私たちは靴下なら奥行きを出せると確信しているので、パーパスでもビジョンでも靴下というドメインにこだわっています。

ブランドが強くなったらTシャツを出せばいいという考え方もありますが、それをやったらブランドが薄くなってしまうので絶対ダメです。

私たちのビジョンは、あるべき姿から考えて設定しています。規模を拡大しよう、競合からパイを奪おうではなく、自分たちが本質的にやりたいことは何か、自分たちの仕事の意味は何かといったところから考えています。
靴下なんて3足1000円の消耗品だと思っていた人がうちの靴下を履いたら、なんか全然違う世界観があって、履いた瞬間からめっちゃ気持ちよくて、1日が全然違うという風な、暮らしを変えるぐらいのクォリティがあるからこそ自分たちが作る意味があるので。
そうなるとビジョンのあり方も、売上を伸ばすとか言うんじゃなくて、自分たちはこういうスタンスでいたいよね、という常に見て立ち返れるものであるべきだなと。

価値ある仕事をしている従業員の「暮らしの価値」を変える

私が入る前には売上2億8000万くらいだった会社が、今やっと5億8000万くらいになって、粗利率も収益性も上がって、給与面に手が打てる状況になってきたので、2023年の4月に10~15%のベースアップをしました。

次に足りていないのは休みなので、来年は設備投資をして、少ない人数でも生産性を保てるようにして、みんなが気兼ねなく有給を使える環境を作っていきたいと考えています。
働いてくれるのは嬉しいのですが、仕事は短距離走ではなくマラソンなので、残業が常態化して体力をすり減らすのは健全ではありません。繁忙期の10月から12月は一次的に短距離走で頼む、という感じですが、それ以外の時は走り続けなくてよいなと。

ベースアップを実現できている背景として、粗利率の改善があります。私が入社した時は自社ブランド比率が3%でしたが、今は53%になっています。
自社ブランドに注力しながら、OEMもしっかり維持していて、トータルで収益性を改善していくことで社員のベースアップを実現できています。
パーパスの「靴下で一日を変える。靴下で価値を変える。」というのは、もちろん履く人にとっての価値を変えるという意味でもありますが、作り手である従業員の働く価値、暮らしの価値を変えるという意味も込めています。

今後のテーマは「より価値を届けること」と「ブランドマネージャーの育成」

自分たちが本当に良いと思う奥行き、深みというのをどれだけ深められて、どれだけ届けられるのかということに引き続きチャレンジしていきたいですね。10年後とかであればアジアも成長しているだろうし、もしかしたらミャンマーの人がうちの靴下を履くかもしれないしですし。どういう人たちが今後、自分たちのものづくりに共感してくれるんだろうかということを楽しみにしています。
具体的な手段としては、たとえば今、東京にお店を作ろうというのを進めています。東京、大阪、奈良と3拠点できれば、ブランドの情報を発信して、より価値をお届けできるようになるなと。

東京はやっぱり一番人口が多くて、消費のメインの場所で、インバウンドのメインの場所でもあるので。パーパスから考えたら「靴下で1日を変える」インパクトが一番強い場所は首都圏だろうと。昔は関西本社だから東京にお店を出すのがなんとなくかっこつけて避けているところがあったのですが、変なこだわりを捨てて、パーパスから考えて意思決定しました。

あとは今だと、私がブランドマネジメントをしてしまっているので、ブランドマネジメントができる部下を育てたいなと。
なので自分で理想を掲げて、課題設定をして、やり切れる人材を採用したいと考えています。こんな風にやったらいける感じがするからやってみますと言って、ちゃんとやり切る。それで失敗しても、そこで考えて修正できる力は絶対に必要だと思います。
たとえば部下に、30までに家を建てて、こういう風になりたいと思う、だから社内の部署異動でも手をあげて、自分主体でやっていくというものがいまして。そうやって自分のイメージしたことに対して、失敗でもよかったんですけど、ちゃんと成功している部下がいて、そういう人はやっぱり良いですよね。

人材育成に関しては、かなり力を入れてOJTをやって、海外にもひとりで行かせてということをやっていて、あとは部下と話している時に「俺がどう思うか考えてみて」と言っています。私がどう考えているかということが1つの判断基準になって、そういう思考をしていると、なぜ私がそう考えているのかという理由もわかってくるので。
そのうえで「社長の言っていることもわかるんですけど、自分はこう思います」と言えるようになったら、自分でビジョンメイクができるようになってきているなと思います。そうしたら「そう考える理由を教えて」とこちらから聞いていくフェーズに移れるので。

【URL】
株式会社ニット・ウィンの公式サイトです。

https://knitwin.com/

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社名:株式会社ニット・ウィン
本社所在地:奈良県葛城市木戸195-7
設立:1950年
事業内容:シルク、ウール、コットン、リネン等の天然繊維を主軸とした靴下・ニット製品のOEM製造及び自社ブランド商品の製造、販売
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