創業100年の老舗タオルメーカーが生み出す本当の“価値”

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今回は、神藤タオル株式会社 代表取締役 神藤貴志 様です。

【Profile】
神藤タオル株式会社
代表取締役 神藤貴志 

創業1907年(明治40年)大阪・泉州 泉佐野市でタオルメーカーを営む「神藤タオル株式会社」代表。2017年より自社ブランド「SHINTO TOWEL」を展開。国内外のセレクトショップをはじめ、カフェやブックストアなどで販売し好評を得ている。

目次

綿本来のふんわりとした手触りと吸水性に優れた「泉州タオル」

 明治20年(1887年)、ここ大阪泉州で国産タオルが初めて生産されました。それが「泉州タオル」の始まりであり、泉州が「日本タオル産業発祥の地」と呼ばれる所以です。

当時、泉州では綿花栽培が盛んだったため、綿糸を紡ぐ紡績の技術や、その糸で布を織る綿織物の技術が発展し、「和泉木綿」と呼ばれる手ぬぐいや浴衣地が高い評価を受けていました。

既にタオルはイギリスやドイツから輸入されていましたが、まだまだ高級品で、その温かさと柔らかさからマフラーとして用いられることもあったそうです。そこで、佐野村(現泉佐野市)の里井圓治郎氏がタオルの構造を解析し、テリーモーション(※1)を考案してタオルを作り、今日に至ります。
(※1)タオル地のパイルと呼ばれるループの部分を織り出すメカニズム

こうして生まれた泉州タオルの特徴は「後ざらし製法」。和泉山脈からもたらされる豊かな水資源で、織り上げた後でタオルを洗いにかける「後ざらし」をすることで、糊や綿糸そのものに含まれる油分や不純物を取り除き、清潔で綿本来の吸水性に優れたふんわりとした手触りになるのです。

ただ、産地としては業務用タオルや粗品用タオルの量産がメインでした。泉州は、もともと手ぬぐいの産地として発展してきたところなので、軽くてかさばらず、吸水性が高くて乾きも早いといった機能性に特化してきたのではないかと思います。

職人魂に支えられた神藤タオルが、自社ブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げるまで

1907年(明治40年)に創業した神藤タオルは、2023年で116周年を迎えました。

安価な中国製品の台頭の影響もあって自社のスタンダードなタオルの生産からOEM生産(※2)に注力した際には、普通なら断りたくなるような難しい要望にも、現場の職人さん達が「とりあえずやってみよか」と取り組んでくださり、いろいろと苦労しながらも最終的に実現してくださったので、弊社はそうした職人魂に支えられてきたといえます。
(※2)他社ブランドの製品を作ること

先代である祖父は常に2つのことを言っていました。1つは「値段を落としに行くな、品質は必ず保て」ということ。もう1つは「お金がかかっても常に新しいものを作れ」ということ。当時は経営的にかなり厳しかったはずなので、それを従業員に対して明示していた祖父は本当に凄いと思います。

そのおかげで、私もそうしたマインドを受け継いでいるかも知れないということは、どことなく感じますね 。先代が亡くなり、私が社長を受け継いで2年ほど経つと、常に新しいものを作っていくためにもこれからは自社主導で商品づくりをしていかないといけない時代なのかもと考えるようになりました。

その際に迷わず外部チームにデザインで入ってもらおうと踏み切れたのは、大阪のデザイン会社による関西のものづくりを発信するプロジェクト「made in west」に声を掛けていただき、自社開発の特殊織り「2.5重ガーゼ」を製品化した時にデザインの力を実感することができたという経験があったからです。ただ白無地で作ったサンプルにタグを1つ付けるだけでそれが商品となり、しかもその評価がとても高くて、いろんな人から「あれ見たよ」と声を掛けていただくようになったんです。

クオリティを高めるだけでなく、ものづくり企業やその背景にある地域のことまで紹介して商品を出していくというのは今でこそメジャーになっていますが、「made in west」にお声掛けいただいた当時(2011年)はまだそういう見せ方をしているところが多くありませんでした。共に自社や産地の先を見据えながらものづくりができる、信頼できるパートナーを早期に見つけられたという点は、弊社にとって大きなプラスとなりました。

自社ブランドを形にしていく過程では、そのデザイン会社とコンセプトワークを重ねに重ねました。それまではOEMの仕事で、お取引先から渡されたデザインをどうやって再現するかというようなアプローチしかしてこなかったので、この商品は誰に向けてとか、どういう風に見せていくとか、どういう風にお客様に伝えるかなんて恥ずかしながら考えたことがなかったので、思っていた以上に大変でしたね。

結果的に、常に考え続けてアップデートしていくという意味を込めて、「本当にいいタオルとは何かを求めていく」という命題を課すことになりました。

そうして2017年、ついに自社ブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げました。立ち上げてからも、サステナブル社会の実現に向けてできる限り環境に負荷を与えないものづくりを目指すべく途中ですべての原材料をオーガニックコットンに切り替えるなど、さまざまな方面からアップデートを続けています。

タオルメーカーとして大切にしていること

自社ブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げて取扱店舗数が増えると、ありがたいことにバイヤーさんから「こういう風に喜んでもらいました」というお客様の声を聞くことができるようになりました。

自分の会社や商品のことを褒めていただけると、自分たちのしていることがちゃんと認められている気がして、報われている実感が湧きます。

他にも、催事に出店していた時に、お客様から弊社の大判タオルをひざ掛けやブランケットとして使っていると教えていただいたんです。私たちが思いもよらない使い方で喜ばれていることに驚いて、そうした声をお客様から直接聞けたことはすごく新鮮でした。

そうしたお声がきっかけとなり「SHINTO TOWEL LABO.」というプロジェクトを立ち上げまして、お客様のご意見やご要望をもとに商品開発をしたり、商品サービスを考えたりしています。

実際に「SHINTO TOWEL LABO.」を通じて新しい商品構想がいくつか形になっているので、本当にお客さまにとっていいタオルを考えるためにも、お客様の声がよりダイレクトに届きやすい場を作って良かったと感じています。

また、当たり前ではありますが、私はものづくり企業として自社の「ものづくりの力」も常に重視しています。私たちの商品を手にしたお客様に「思っていたほど良くない」と思わせてしまっては、ブランドとして成立しないからです。

その点において、職人さんの技術力が土台として不可欠になってくるので、私がトップダウンで「こうしろ、ああしろ」とやり方や考え方に口を出すことはありません。どういう商品にしたいかという全体的な方向性や求める要素を伝えて、細かいことは職人さんのやり方や発想にお任せするようにしています。見方によっては無責任かもしれませんが、職人さん達を信頼しているからこそ安心してものづくりの現場のことは任せています。

共に仕事をする仲間づくり

ものづくりを進めるうえで、会話のキャッチボールってすごく重要だと感じるんです。製造業はどうしても受発注関係があるので、協力企業や周辺加工業とどちらの立場が上か下かみたいなところがどうしても出てきてしまうと思うのですが、もちろん商売として無視できないシビアな部分はあるものの、実際にそれだけをベースに話し出すと信頼関係をうまく築けなくなってしまうと思っています。

解決すべき課題を前に、どちらか一方のやり方だけを貫くのではなくて、お互いの環境や事情を理解しようとした上で対話をしていかないと、その答えは見つけられないと思います。

それは従業員さんや取引先との関係も同じで、対等に対話ができるか、お互いのことを理解し合うつもりでいるかといったところは重要視しています。「この人はちゃんと対話ができるな」と感じた方との関係は長く続きますが、そうでない方とはいずれどちらからということもなく離れてしまう気がしますね。

ただ、従業員さんの待遇に関してはもっと改善しないといけないところですが、まだ実現出来ていないのが今一番の課題です。いつかこの会社で働いていて良かったと思ってもらいたいと思っています。

タオル産地としての今後の展望

冒頭でもお話ししましたが、泉州タオルの「後ざらし」の工程で大量に水を使う私たちタオル製造業は、和泉山脈の豊富な水資源の恩恵を存分に受けています。
そこで、改めて産地を上げて一昨年から「水とともに生きる 泉州タオル」という、産地のリブランディング事業に取り組んでいます。

例えば、工程内で発生する排水を世界的に見ても厳しいと言われる排水基準をクリアするようにバクテリアの働きで処理してから川へ放水する事などは、私たちにとって以前から当たり前に続けてきたことなので特別に言う必要もないだろうとPRをしてきませんでしたが、環境に対しての配慮が当たり前にできているのは実はすごいことなんだということを、生産者である自分たちがまず自覚して、それをしっかりとお客様にも伝えていくことが、自分たちの価値向上にもなると考えています。

そういった意識を自分たちのなかにしっかりと持って続けていくことが大事だよねというのが、ここ数年で後継者として産地に入ってきてくれた若い世代の間でも共通認識になってきているところなので、しっかりと活動を続けていって、産地全体がそういった正しい視点を持って盛り上がっていくことができたら、それが一番強いんじゃないかなと思います。

以前はこうした取り組みを通じて「産地の維持活性化を目指していけたら」と表現していましたが、後継者問題や産地全体での生産量減など、現実的な問題を直視するとやはり維持を目指していてはやっていけません。もっともっと産地として盛り上げていくことが必要だと感じています。

【URL】
神藤タオル株式会社の公式サイトです。

https://shinto-towel.jp

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社名:神藤タオル株式会社
本社所在地:大阪府泉佐野市日根野 2577-1
設立:1907年
事業内容:タオルの製造・販売
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