株式会社ベストコ 井関大介社長

教育格差をなくし、自律した人材を育てたい。ICTで地方に教育インフラを。

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今回は、株式会社ベストコ 代表取締役社長 井関大介 様です。

【Profile】
株式会社ベストコ
代表取締役社長 井関大介 

1975年岩手県盛岡市生まれ、秋田県大曲市で育つ。秋田大学教育学部卒業。大学卒業後、クラス指導の学習塾に就職。その後、2009年に株式会社Global Assist(現・ベストコ)を創業。現在は東北、栃木、香川、岡山で113教室、生徒数6000名規模へと成長。

目次

現在の事業内容は?

私たち株式会社ベストコは、ベスト個別、ベスト個別motto、ベスト個別onlineをはじめとした学習塾事業を展開している会社です。また最近では、ICTを活用した新しい学習体験の提供や研究開発事業もスタートしています。
ICTに注力する理由としては、データに基づいた科学的アプローチによる教育サービスの質の向上により、今まで以上に生徒さんの人生に教育で貢献するため。また、塾業界はどうしても業務過多でハードワークのイメージが強いので、その業界イメージを払しょくすることで教育に携わる人材を増やすためです。

例えば、当塾では授業をすべて動画で配信しており、生徒さんはタブレットやスマートフォンを使って授業を受け、オンライン上でテストを受けることができます。もし、わからないことがあれば、先生に直接質問することが可能です。
それによって、先生は生徒ごとにきめ細やかな指導を行えるため、効率的に学力を伸ばせるようになります。生徒も焦らず自分のペースで学習に取り組めるので、自信もついていくんですよ。
また、生徒ごとの学習データを収集することで、データを生徒ごとに何時間勉強していて、教科ごとにどれくらい理解出来ているかが可視化されます。これによって生徒の課題にあった的確な指導ができるようになります。

このようにICT導入によって、従来のように全員一律の学習を受けさせるのではなくて、生徒一人ひとりが自分のペースで勉強できて、わからないところだけ先生に聞きにいくといった「自立学習モデル」を実現しました。

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教育事業に携わったきっかけ

実は自分の父親が歯科医だったんです。幼いころからずっと「将来は歯医者になれ」と言われて育ちまして、高校も私立理系で歯学部進学を目指してましたね。ただ、高校生の頃は父親とはあまり仲が良くなくて、いつも喧嘩してました。そしたら、高校3年生のときに急に父が「もう自分の好きな道でいい」と言い出したんです。
それまで将来やりたいことなんて今まで考えたことありませんでしたから。でももう高3の9月なんで、何をやるか決めないといけない。その時、好きだったことといえば、マンガ、美術、建築くらい。それで色々考えているうちに思いついたのが、美術の先生になることだったんです。

学校の先生なら将来も安定しそうですし、好きな美術を仕事にできるといった感じで。今となっては安易だったと思いますが、当時は「これしかない」と覚悟を決めましたね。
それで、私立理系の高校で歯学部を目指していたのを国立文系に切り替えて受験したら、なんとか合格して、晴れて教育の道に進むことになりました。

塾業界を選んだ理由

ただ、学校の先生になるのも大学在学中に諦めました。理由としては、私の大学卒業のタイミングはいわゆる「ゆとり教育」元年で学習指導要領に関してモヤモヤしたんです。
また、教育実習に行ったときに、自分が思い描いている学校のイメージと違うなと感じてしまって、それで自分には教員が合わないなと感じてしまったんです。

教員という道を諦めたタイミングで、先輩から「塾でアルバイトしてみないか」と声をかけられて、興味本位で始めてみたんです。そしたら、その時に教えていた生徒の子が、受験で大逆転合格してくれて。お母さんも本人もめちゃくちゃ泣いて喜んでくれたんですよ。
これには心が震えた瞬間というか、今までに味わったことのないような感動を覚えましたね。特に当時の私は、歯医者にもならず、学校の先生も諦め、もはや社会に対して何をしていいかわからなくなっていて、まさに暗黒時代でしたから。
そんなときに、自分の目の前でお子さんと家族が泣いてくれている。自分のアイデンティティというか、存在価値みたいなものを救ってもらえた感じがしたんです。それで、塾業界に強く興味を抱くようになりました。

独立したきっかけ

新卒で学習塾の会社に就職しました。その会社は今は大きく、とてもしっかりした会社になっていますが、当時はまだ20教室くらいで整っていない部分も色々とあって、なかなかハードな環境でした。
厳しい環境でしたが、とにかく必死で働いていた中で、「どうやったら生徒が塾に集まってくれるか」とずっと考えていました。そこで感じたのが、勉強が苦手な子に授業をたくさん取ってほしいけれど、そういうお子さんがいる家庭ほど授業料を多く払ってもらえないことでした。逆に、医学部とかを目指すような勉強が得意なお子さんがいる家庭はたくさん授業時間を取っているんですね。つまり、所得格差によって教育格差が生まれているわけです。私はこうした状況に危機感を覚えたんですね。

そこで、「リーズナブルな料金で一人ひとりに合わせて教える塾」を作りたいと思ったんです。それで、会社と交渉して社内ベンチャーのような形で、個別指導の部門を作らせてもらいました。
とはいっても、まだ小さな会社でしたので色々と上手くいかないこともあって。それなら分社化した方が、お互いにとって良いんじゃないかと思い、事業を売っていただきました。

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現在に至るまで大変に感じたこと

大きく3つあります。1つ目は、最近の話になりますが、社員のモチベーション管理ですね。私がこの会社を創業したときに掲げたのは、「たくさんの従業員にとって、いい会社にしたい」ということです。会社の主人公は社長ではなく社員ですから、社員たちが一番輝けるように、さまざまな制度や環境を整えてきました。そのため、社員にはノルマを課さずに伸び伸び働いてもらっています。
一方、それによる弊害も生まれています。例えば、教室の売上を把握してなかったり、生徒数すら知らなかったりするわけです。また、「何をしたら褒められるのかわからない」「他の社員と比べて不平等だ」とか、そんな不満の声も出はじめています。そのように掲げる理想と現場の実態のギャップをどう埋めて行くかは、今も悩んでいる日々です。

2つ目は、創業2年目のタイミングで東日本大震災に直面したときのことです。当時は16教室でしたけど、このまま経営していけるか不安でしたね。また、その数年後も教室近くの川が台風で氾濫したり、近年では新型コロナが流行るなど、たびたび外的要因によって経営環境が脅かされましたが、なんとかピンチを切り抜けてきました。

3つ目は、少子高齢化による市場の変化ですね。やはり、子どもの数が減れば市場自体が縮小しますし、高齢化が進めば人材採用も厳しくなります。そういうことも含めて、経営環境はどんどん厳しくなっているのは肌身に感じていますね。だからこそ、魅力的な会社でユニークなビジョンを持っているとか、ここで働きたいと思ってもらえるような会社を作らない限り、地方から塾がなくなってしまうと危機感を抱いています。だからこそ、自分たちは教育に真剣で、かつ、ユーモアのある会社であり続けたいですね。

塾業界の課題とは

教育業界の課題の一つは、学習効果の分析があまりされていないことかもしれません。どんな教え方が効果が高いか?が明確にしにくいため、指導ノウハウが属人的になっていることが多く、マニュアル化や、オペレーション化などが、他業種に比べてあまり進んでいないかもしれません。
先生個々の指導能力に依存せず、だれが教えても一定以上の教育効果を返し続けられたら、教える側・教わる側双方にとってWIN-WINですよね。だからこそ科学的根拠に基づいた教育方法を構築できたら、塾業界や教育業界はもっと良くなるはずだと考えています。
そういった背景から、当社ではICTを積極的に導入しています。効果をすべて解析して、一人ひとりの子どもたちに合った効果的な学習カリキュラムを提供することが大切だと考えています。

教育業界のIT化が遅れている理由とは

IT人材が不足しているところが大きな要因ですね。加えて、タブレットなどのデバイス、ネットワーク環境を整えるのには、大きな資金が必要になります。また、社員のICTやネットワークへのリテラシー教育も必要です。、ICTに踏み込むのは想像以上に険しい道のりです。
現場の社員の方の中には、「ICTによって自分の仕事が奪われるんじゃないか」と不安になっている方もいらっしゃいます。どの先生も「映像なんかよりも、自分が教えた方が上手いですよ」って思ってますからね(笑)
しかし、学習塾にとって教えることはあくまでも手段でしかありません。目的は、成績が上がることで、子どもたちが自信を持てたり前向きになること、また、目標にむかって努力できる自律した人材を育てることだと考えています。だからこそ、産業として『自己実現産業』に向かっていくべきだと思いますね。
とはいえ、徐々に業界も変わり始めています。EdTech(※)プレーヤーとして、スタートアップのベンチャー企業がどんどん入って来てますからね。ここから数年も経てば、業界はかなり変わると思います。
※:EdTech:Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、テクノロジーを用いて教育を支援する仕組みやサービスを指す

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地域に根ざして経営する理由とは

まず経営的側面でいうと、一定のチームを作れる社員数の規模になっていないと組織は機能しないと考えています。単に売上を増やすことが目的であれば、フランチャイズ展開する方法もあります。しかし、私たちの目的は、地方にも教育のインフラを創り、守ること。
なので、関わる人々には経営理念や想いの部分を共有したいんです。そうなると、すべて直営でやるほうが良いと判断しています。また、社員の働きやすさも重視していますので、チームをつくれる規模にしていきたいと考えています。そうなると、地域に1店舗だけ出店するというわけにもいかないので、結果として地域に根ざして複数店舗経営する必要があるという理屈です。
また、地域活性への想いもあります。2011年に東日本大震災を経験して、地方経済を守るのはそこで生まれ育った人たちがやるしかないんだと感じました。私自身も東北出身ですし、東北の活性化のために我々がやらないといけないと使命感を抱くようになりましたね。
また、そういった想いを持って活動していく内に、多くの出会いや機会に恵まれました。ここまで決して順風満帆ではありませんでしたが、周囲の方々に勇気づけられました。

地方で働くことの魅力とは

やはり自然の多さであったり、土地の広さであったり、時間の流れであったり、都市部にはない魅力が地方にはたくさんあります。また、都市部で生活するよりも経済的に余裕が生まれると思いますね。
仕事の面でいうと、地方はリソースが足りないですから、困ったときに頼るところが少ないんです。なので、提供価値に対して感謝の度合いが大きいんですよ。都市部に比べたらモノは少ないかもしれないですけれど、「豊かな人生を送る」という点でいえば、地方は魅力が大きいと感じますね。
当社としても、「教育で人の人生に関わってみたい」「教育を通じて地域貢献をしたい」といった想いがある人と一緒に働きたいですね。教育はまちづくりの土台であり、何よりも「人」の力が必要ですから。

経営者として大事にしていること

物事の見方を変えてみることです。例えば、少子化と聞くと先行きは暗いって思いますよね。しかし、少子化だとしても子どもの数がゼロになるわけでも、全ての塾がなくなるわけではないですから。むしろ、残った塾は残存者利益によって市場内のシェアを大きく取れる可能性があるかもしれません。同じ物事でも見方を変えて前向きに捉えるようにしていますね。
誰かのせいにしたところで何も変わりませんから。どんな状況でも自分たちの手で変えていけるように、常にどうすべきかを考えるようにしています。
会社とは、社員の頑張りによって事業を大きくして、その成果を社員に還元できるようなエコシステムでありたいと思っています。なにより教育というのは、現場の社員に頑張ってもらわないと成り立たないビジネスですから。だからこそ、社員がいかに気持ちよく働いてもらえるかを考えています。

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次世代を担う若手経営者はどのような方向性で頑張っていくべきか

地方は都会に比べてリソースがないので、積極的に繋がっていくことが大事だと思いますね。自分たちだけで頑張ろうとするのではなくて、横の繋がりを持つことで足りないところを補ってくれたり、新しいシナジーが生まれたりすると思うんです。
むしろ、課題が複雑化し過ぎて何が正解かわからないような現代においては、自分たちだけで全部やろうとするのは正直難しいと感じますね。だからこそ、「自分はこれが得意だ」というものが一つでもあるなら、他の部分に関してはその領域が得意な人を見つけてきて、一緒にやればいい。
苦手なことをやろうとするよりも、得意なことや好きなことに目を向けたほうが結果的に上手くいくと思います。

今後のビジョンは

会社としては、引き続き「社員にとって働きやすい職場を作ること」を前提に規模を拡大していくことですね。現状ではICTの活用によって、ある程度働きやすい環境を作れてきたと思っているので、これを今後は他県にも広げて事業規模の拡大を目指しています。
やはり、働きやすい会社を作るとなると規模を拡大する以外にないと思っていて。人が増えればその分できることが増えたり、労働環境も良くなったりします。ICTに関しても多額の投資をしていますが、それだって規模があるからこそ実現できるんです。だからこそ、規模を大きくしていくことは重要ですし、結果として我々が掲げるビジョンの実現につながると信じています。
その上で具体的にどんな会社にしていきたいかというと、社員がこの会社で働いてよかったと思ってくれたり、社会貢献度が目に見えたりといったように、売上や利益だけでは計れないような存在価値がある「面白い会社」を作っていきたいと思います。
現在私は48歳なので、あと10年くらいかけて自分が思い描く形にしたいと考えています。それで、60歳くらいになったときには体力的にもしんどくなると思うので、会社経営はバトンタッチして、自分は何か新しいことやりたい若い経営者のサポートができたら理想ですね。

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【URL】
株式会社ベストコの公式サイトです。

https://bestco.jp/

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社名:株式会社ベストコ
本社所在地:宮城県仙台市青葉区一番町1丁目7番20号 DJK一番町ビル 2階
設立:2009年
事業内容:学習塾事業、学習アプリ事業、調査・研究事業
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