株式会社会津工場 代表取締役社長 鈴木直記 様

唯一無二の技術力と品質を追求する。会津から世界を目指す鋳物メーカーの挑戦。

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今回は、株式会社会津工場 代表取締役社長 鈴木直記 様です。

【Profile】
株式会社会津工場
代表取締役社長 鈴木直記

1961年生まれ。地元の福島県只見町の高校を卒業後、1979年に株式会社会津工場に入社。Hプロセス工法の確立に携わり、1994年に取締役に就任。その後営業部長や工場長などを歴任し、2010年に社長に就任した。独自の鋳造技術と攻めの営業スタイルを武器に躍進し、現在に至る。

目次

独自の工法で高品質な鋳物を製造

弊社は溶かした金属を型に流し込んで作る「鋳物」のメーカーです。主力商品は自動車部品ですが、最近ではオリジナルブランド「会炉(AIRO)」を立ち上げ、アウトドア調理器具などの販売を始めました。

独自に確立した「Hプロセス工法」が弊社の売りです。鋳型を水平に複数個連結させることで、一度に複数の製品を鋳造できます。もとはイギリスの会社が開発した工法ですが、試行錯誤を重ねて独自のスタイルへと磨き上げ、世界で初めて本格的な量産体制を整えました。

弊社のHプロセス工法では、従来の工法よりも薄くて軽い高品質な鋳物を製造できます。さらに、金型の製造や切削作業まで自社で一貫して行うため、コストや工程数の大幅なカットにもつながっています。

弊社はもともと、千葉県にある鋳造メーカー「内外マリアブル株式会社」の会津工場として1975年に操業を開始しました。その後1977年に独立し、株式会社化して再スタート。社名が一風変わっているのは、当時の工場の名前をそのまま使ったからなんです。

私は会津で生まれ育ち、地元の高校卒業後の1979年に弊社に就職しました。当時はまだ独立したてで、従業員も10人ほどの小さい会社でした。

入社後は5年ほど親会社で研修し、経験を積んだのちに会津工場に戻りました。32歳の頃に取締役に就任し、40代前半の頃には営業部長や経理部長、工場長なども経験。48歳で社長に就任してからはさらに設備投資をし、徐々に事業を拡大してきました。

卓越した技術の裏には失敗の日々

Hプロセス工法の導入に着手したのは私が20代の頃です。当時の社長がイギリスで生まれたこの工法に目をつけ、開発した会社と交渉して専用実施権を獲得しました。

とはいえ、技術の確立には非常に苦労しました。複雑な制御が上手くいかず、何度挑戦しても8割くらい不良品になってしまうんです。ただ、条件さえそろえばとても品質のいい鋳物ができるため、ものにできれば大きな商機になるという確信もありました。

2年ほどはトライアンドエラーの毎日でしたね。合計で2億円ほどかけて設備投資もしたので、諦めるという逃げ道はありません。失敗を重ねながら改良と投資を繰り返し、ついに量産体制を確立。導入から7年後には世の中にPRできるようになりました。

こうして磨き上げた私たちのHプロセス工法は、他社では絶対真似できないと自負しています。

「勝手に試作」で顧客のニーズと心をつかむ

弊社のもう一つの強みは、お客様が本当に必要としているものを図面から読み取り、改良した試作品を勝手に作って提案する営業スタイルです。

私自身、数々のお客様への営業を通し、どのような品質の鋳物が求められているのか肌で感じてきました。ただ、鋳物には技術的な限界があることが常識のようになっていて、見積もりに出される図面は品質を妥協したもの。つまり、どこのメーカーでもできるような図面なんですよね。

一方、私たちが確立したHプロセス工法では、従来では難しい仕様もかなえられるようになりました。

図面の見積もり依頼が来たら、お客様が本当に求めている品質や性能を突き詰めた上で、より喜んでもらえそうなアイデアを出します。でも、ただ机上で提案するだけでは向こうも半信半疑なんですよね。だから、この時点で勝手に試作までしてしまうんです。

試作品を実際にお見せすると、「こんなものができるの?」とびっくりされますよ。そこから受注につながることが多く、現在メインで生産している部品の半分以上はこちらから提案したものです。

お客様が新しい部品を作る時には、「会津工場ならここまでできる」と期待して設計した図面を持ってきてくれます。つまり、他では見積もりすら出せない仕様になるわけです。おかげさまで、リピーターのお客様からは他社に浮気せずにご注文をいただいていますよ。

図面から真のニーズをくみ取るには、その部品がどのような機能で使われるか把握するのが重要です。どこにどのような部品が使われているか知るため、ロボットをわざわざ1台購入して分解することもありますよ。

成功の反対は何もやらないこと

私は成功と失敗はイコールだと思っています。成功の反対は失敗ではなく、何もやらないこと。何かに挑戦して失敗したとしても、それは失敗という結果を出すことに成功したと捉えればいいんです。

飛んでいる飛行機からパラシュートなしで飛び降りる場合、リスクはどのぐらいだと思いますか? 答えはゼロです。

飛行機からパラシュートなしで飛び降りれば、よほどの奇跡が起きない限り生き残ることはできません。想定外の事態が起きることをリスクだと定義すると、この場合のリスクはゼロなんです。

社会は常に新しく便利な方へと進化を続けています。どんな企業も、時代に追いつこうと必死で新技術や新商品、新サービスを開発し合っているわけです。その競争を勝ち抜くためには、リスクを覚悟で挑戦しなければなりません。

リスクを恐れるのは当たり前のことです。でも、リスクが怖いから何もやらないという結論を出すのは、飛んでいる飛行機から飛び降りて自ら死に向かうのと同じなんですよね。

オリジナルブランドも展開中

BtoC向けブランドを立ち上げたそもそものきっかけは、従業員が「自分はこんなものを作っているんだ」と自慢できる商品を作りたいと思ったからです。弊社の主力は自動車部品ですが、車に組み込まれると外からは見えなくなってしまいますから。

ただ、当初はブランドの立ち上げまでは考えていませんでした。7~8年前、アウトドア用品メーカーの株式会社スノーピークにダッチオーブンの試作品を持ち込んでみたんです。すると想像以上に好感触で、同社で扱うダッチオーブンの製造を全て任せてもらえることになりました。

それが追い風となり、自分たちでブランドを作ることにしました。2023年頃から自社のホームページやふるさと納税の返礼品などで少しずつ売り出しています。とはいえまだ立ち上げたばかりなので、お客様の反応を見ながらブラッシュアップしている段階ですね。

今後は、さらに品質を高めながらアイテム数を増やし、それから大々的にPRしようと目論んでいます。

雇用創出で地域に貢献を

私は会津という地域に生まれ育ったことには何か意味があると思っています。そこに暮らしているからには地域の役に立ちたい。そのために私ができる一番の貢献は、事業を拡大して雇用を確保していくことです。

10人ほどの従業員からスタートした弊社も、2024年現在には200人ほどまで人数が増えました。そのうち8~9割は地元での雇用です。また、インドネシアからの研修生も20人ほど受け入れています。

求める人材像は、まず健康であること。製造業は体を使う仕事が多いですから。そして、失敗してもくよくよせず、新しいことにどんどん挑戦できるポジティブな人と一緒に働きたいですね。

もう1点が、デジタル面に精通した人材です。業務の効率化を目指しデジタル化やロボットの導入などを進めている最中ですが、今までにない能力が求められるため、これがなかなか大変で……。

もちろん、長年磨いてきた現場の職人技をデジタルに置き換えることはできないので、その継承もしっかりと進めていきます。一方で、デジタル分野の社内改革を進められるような人材も確保し、育てていきたいですね。

会津から世界へ

「会津から世界を目指す」というスローガンのもと、海外での事業展開を見据えた布石も打ち始めています。

弊社の製品の5割ほどはインドやヨーロッパ、南米などに納品していますが、コスト面を考慮すると現地で生産できた方が好都合です。そこで、まずはインドに現地法人を設立しました。工場の建設などはまだ先の話ですが、具体化に向けて模索中です。

また、弊社にはインドネシアからの研修生も多いです。彼らが帰国後も働ける場所を確保するため、提携できそうな現地の鋳物メーカーを探しているところです。

海外で事業展開しようとすると、大きな投資が必要です。さらに、事業を軌道に乗せて投資資金を回収するまでには時間もかかります。自分自身の年齢を考えると、私の一存でやるべきではありません。10年先、20年先を担う次の世代にバトンを渡した方が良い。

そのために、会社の体制も新たにしました。2023年9月の決算期をもってベテランの取締役には降りてもらい、30〜40代前半のメンバーに任せることにしたんです。これからの会津工場という会社を育てていくのは、若い彼らの役目です。 

【URL】
株式会社会津工場の公式サイトです。
https://www.kabuaizu.co.jp/

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社名:株式会社会津工場
本社所在地:福島県南会津郡只見町大字二軒在家字上タモ721-1
設立:1977年
事業内容:Hプロセス工法による自動車部品などの製作
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