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今回は、株式会社柏屋 代表取締役社長 本名 創(ほんな そう)様です。
【Profile】
株式会社柏屋
代表取締役社長 本名 創 様
1980年生まれ。2006年に株式会社柏屋に入社。店舗営業部、商事営業部、企画部、子会社の工場長を経て、2015年に専務に就任。2021年8月から代表取締役社長として、福島県産の食材の利用にこだわって製菓・販売事業を展開している。
日本三大まんじゅうの1つである「柏屋薄皮饅頭」を中心に、和菓子・洋菓子を販売
弊社は日本三大まんじゅうの1つである「柏屋薄皮饅頭」を中心とした菓子の製造・販売をメインの事業にしている会社です。直営店を21店舗展開しているほか、全国各地のサービスエリアや駅、百貨店などに商品を置かせていただいています。
薄皮饅頭は1852年の創業時に、初代が京都で製法を学んで、奥州街道・郡山宿(現在の福島県郡山市)で売り始めた商品です。当時、東北でこしあんの饅頭は珍しかったこともあって、名物になっていきました。それからしばらくは和菓子屋として営業していましたが、4代目の頃から洋菓子も取り入れるようになりました。
当時は洋菓子も扱っている和菓子屋は多少珍しかったかもしれませんが、今では和菓子と洋菓子の垣根もだんだんなくなってきて、洋菓子の素材を和菓子に使ったり、逆に和菓子の素材を洋菓子に使ったりといったことも一般的になってきたのではないかなと。
最近の話ですと、毎年柏屋では、小豆の新物が取れた時に、新豆を使った薄皮饅頭を皆さんに食べていただく「新あずき収穫感謝祭」(今年度は2023年11月25日~2024年2月29日に開催)というイベントをしているのですが、ここ3年くらいは薄皮饅頭以外の商品にも、和菓子・洋菓子問わず新豆を使っていくということをしています。
和菓子と洋菓子の垣根がなくなってきたとはいえ、新豆の美味しさを和菓子、洋菓子それぞれで伝えているお店というのは、たぶんほかにはあまりないのではないかなと。
お菓子作りから店舗運営まで幅広く経験し、代表に就任
私は幼稚園の頃から、毎朝、自宅にある神社に「美味しい薄皮饅頭をいっぱい作ります」とお参りする習慣があって、そういう風に育てられたので、自分はお饅頭屋さんになるんだろうなとずっと思っていました。
それから高校まではお饅頭屋さんになると思っていたのですが、大学の時に友達がやってる音楽に出会って、真剣にドラムと向き合うことになります。その時父に「音楽をやりたいんだ」という話をしたら、何も反対されず「頑張りなさい」と言ってくれたんですよ。
それから音楽活動をしばらくして2006年に柏屋に入社するのですが、その時も「いいよ」と、音楽をやりたいと言った時も、会社に入りたいと言った時も受け入れてくれたので、親に対する反発心は生まれませんでした。
20代半ばまで自分の歩きたい人生を歩ませてくれたので、これからは恩返しして行こうと、柏屋に入社したのがお菓子屋としての自分の始まりです。
柏屋に入ってからは、まずお菓子のいろはを教わるために商品開発をしている部署に。そこで薄皮饅頭の神様と呼ばれている折笠さんという方に、作り方を1から教わったり、機械ではなく手鍋で作る方法を教わったりしました。他にもいろんなお菓子の講習会に行かせてもらって、そこで1年半くらいお菓子作りについて勉強させていただきました。
その後はお店の経験もした方がよいだろうということで、郡山駅前の本店に1年くらいいて、猪苗代町の磐梯高原店の店長をやってと、店舗運営も一通り経験させていただきました。
それから卸の商事課の課長、商品企画とやっていたところに、東日本大震災があって、2012年から子会社の旬菓工房の工房長をしまして、2015年に専務として本社に戻ってきて、2021年に社長に就任したという流れです。
店舗においては「1日1人ファンを作ること」、経営においては「暖簾(のれん)は革新」を大切に
まず店舗において、お客様にまた来たいと思っていただけるお店を作りたいなと思っています。猪苗代町で店長をやっていた時には、1日1人ファンを作るという意識で接客していました。
もちろんお菓子が美味しいというのはすごく大事なのですが、店舗ではそれに加えて、あの店のあの人から買いたいと思っていただけることがすごく大事だと思っています。お客様にも「あのお店のおじいちゃんの店員さん、いつも元気でニコニコしてて、会えるとラッキーって思うんだよね」などと言っていただけることもあって、お菓子も商品だけれど人も商品だなと思います。
そういった思いをずっと持っているのですが、私がお店に行って、パートさんとかに直接言ってしまうと強いインパクトになってしまうので、部長など現場に近い管理職を通して繰り返し繰り返し伝えるということをしています。
経営において大切にしているのは「暖簾(のれん)は革新」という言葉です。暖簾は守るものではなく振り返るものだと思っています。本当に守るべきは暖簾ではなく信用で、時代が求めているものを常に提案し続けていこうと。
最近の取り組みとして、長年人気商品だったどらやき「福どら」のリニューアルがあります。これまでのどらやきは10日くらいの日持ちでしたが、フードロスの観点から30日日持ちするようにしました。美味しさを保ちながら日持ちもするように、職人さんが工夫して作ってくれた商品です。
薄皮饅頭も5個入りに関しては、商品を一切いじらずパッケージを変えただけで賞味期限を8日から30日に伸ばせたんですね。そういったフードロスに対する取り組みは、廃棄も減りますし、お客様も使いやすいということでご好評いただいています。
お菓子を通して福島の美味しい食材を知ってもらいたい
福島県で創業して、特に郡山という地域で育てていただいた会社なので、やっぱり福島県のものを使ってお菓子を作っていきたいなと思っています。小豆は国産の99%が北海道の小豆なので難しいですが、他の材料に関しては、毎年畑を実際に見に行って選んでいます。
たとえば本店限定のフルーツ大福があるのですが、これは県内の農家さんのところに行って、「フルーツ大福を作りたいんですけど……」というお話をさせていただいて、作っている商品です。
やっぱり福島の果物とか材料、自分たちの地元のものって美味しいんだよというのを知ってもらいたいなと思うので。
どこの地方に行っても「何が有名なの」と聞くと、「何もないよ」という答えが結構返ってくることがあるかと思うんですけど、実は他の地域の人たちから見たらすごい魅力があるものだったり、当たり前に食べてるものが実は日本一美味しいって言われてるものだったりってあると思うんですよ。
そういったものが福島にはきっとあるなと思っているので、自分たちで歩いて、ここの果樹園さん美味しいよねとなったら、そこのフルーツを使うといった地産地消をやらさせていただいています。
薄皮饅頭を心のふるさとに
おかげさまで170年、郡山で商いをさせていただいていますので、薄皮饅頭を食べた時にふるさとを思い出してもらえるような、帰ってきたなと思えるような、心のふるさとになれたらいいなと思っています。
そのために子どものうちから薄皮饅頭を食べていただきたいなと。春にはまんじゅう祭りをしたり、毎月1日には朝茶会というものをやったりと、饅頭に親しんでいただく機会を増やしています。
朝茶会は1974年から、毎月1度、朝に本店で高校生からご年配の方まで幅広い世代が手づくりの薄皮饅頭と季節のお菓子を食べながら会話を楽しめる場として開催しています。朝の6時開始なのですが、私が5時に到着すると「社長遅いですね」と言われてしまうほど、皆さんに愛されている企画です。
先々代の頃から、特にこだわっているのが、世代を超えた交流です。ご年配の方と高校生に相席になってもらうなど、普段の生活では関わらないような世代の交流を作れるように運営をしています。
今後は柏屋をもっと楽しい場所に
今後も福島の素材を使って、福島のお菓子屋としてやっていきたいというのは、ずっと大きな目標としてあります。
あとは柏屋をもっと楽しい場所にしたいなと思ってるんですね。休みの日にどこ行こうかという時に、ちょっと柏屋でも行くかという場所になったらいいなと。家族で出かけて楽しい場所にできたらいいなという風に思っています。
会社としてはコロナ禍前に比べて売上的にも利益的にも上向きになってきてはいて、これまで余裕がなくてできていなかった教育や仕組みづくりに取り組んでいるところです。
そんななか、人材が足りていないというのが直近の課題としてあります。
店舗スタッフをはじめとして、本社のコーポレート、商品企画も絶賛募集中なので、気になった方は弊社のホームページをご覧いただきたいです。お菓子が好きで、お客様を楽しませるのが好き、という方は向いているのではないかと思います。
現在働いてくれている社員は、福島出身であったり、祖父母が福島にいて小さい頃に薄皮饅頭を食べていたりと、なんらかの形で福島にゆかりのある方が多いので、そういった方は引き続き採用していきたいです。
また最近では関西の方で、福島に縁がないけど、良い企業だと思って就職したいと応募をくれる人もいました。お菓子が好きで、人を喜ばせるのが好きであれば、柏屋で活躍できると思うので、弊社きっかけで福島に来てくださる方がいたらうれしいですね。
【URL】
株式会社柏屋の公式サイトです。
https://www.usukawa.co.jp/
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社名:株式会社柏屋
本社所在地:福島県郡山市富久山町久保田字宮田127番地の5
創業:1852年
事業内容:菓子製造及び食品加工並びに販売(和菓子・洋菓子・喫茶)
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